二宮裕次先生×みかわ絵子先生スペシャル対談

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野球漫画を描くお二人の作家さんによる特別対談。実はもともとお知り合い!?野球漫画を描く者にしか分からないことは!?自身の作品、お互いの作品について語り合っていただきました!

 

プロフィール

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――本日はご貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。まず、お聞きしたいのですがみかわ先生は以前、二宮先生のアシスタントをしていらっしゃったようですがお二人はそのころからのお知り合いなのでしょうか。

二宮先生 もともと知り合いだったんです。週刊少年マガジンの瀬尾公治先生の職場で、僕とみかわさんはアシスタント同士でした。
それでお友達だったので、僕が連載始めるときにお声がけして手伝ってもらいました。

みかわ先生 1巻の途中から7巻ぐらいまで働いていたかな。とても働きやすい職場でした。ご飯とかも、いつもおいしい出前とかおやつを食べさせてくれて。ストレスのないようにしてくれました。それは多分、二宮さんが、アシスタントの期間が長かったから、スタッフの気持ちがわかるのかなっていう気がしますね。

二宮先生 こんな職場だったらいいんじゃないかというのを体現できるように善処しています。最高レベルの職場を目指しています(笑)
それと、実は僕、みかわ先生の『忘却バッテリー』のネームを「ジャンプ+」に持っていく前に見ているんです。

みかわ先生 一度、他の出版社で落ちてしまって、それをどうしようかなっていう相談を、週刊の合間にやってくれて。忙しい中、ごめんなさい二宮さん。

二宮先生 いえ、とんでもない。このままで問題ないと思ったんですけど、その出版社で連載用のネームを通すなら多分こうしたほうがいいかもねって話を…。
でも、全く修正せずに「ジャンプ+」で今いい感じなので、マジ、危ねえ、余計な直しをしなくて良かったと思って(笑)

――お二人は野球漫画を描かれていらっしゃいますが、野球という題材で漫画を描こうと思ったのは何故でしょうか。

みかわ先生 私は一度、演劇の漫画を描いていたのだけれども、「演劇」はニッチなジャンルだったのでもう少し母数の広いジャンルにしたいなと思ったんです。

二宮先生 僕、最初は驚いたんです。みかわさんが野球漫画を描くってことに。野球にめちゃめちゃ詳しいわけではないと思っていたから。

みかわ先生 野球の絵とか漫画はすごく好きなんですけど、あまり試合を観たりすることはありませんでしたからね。

二宮先生 でも、『忘却バッテリー』はそれがすごくいい感じに出ている。スポーツに興味ない人でも読んでもらえるにはどうしたらいいかを一番適したやり方でやっていらっしゃると思う。

みかわ先生 ありがとうございます。

二宮先生 僕は自身がやっていたバスケット漫画の連載をしていましたが、それが終わってしまったので次は野球かなって。シンプルにそういう感じで野球になりました。

――同じ野球漫画でも全く毛色の違う二作品ですが、作品のテーマを教えてください。

二宮先生 僕の場合は「揺るぎない意志」みたいなものを描きたいなと思って、それを遂行できるやつは誰かなあと考えていたら、文吾が出てきました。こいつなら多分、地球が明日終わるよって聞いてもボール投げていそうだなって感じました。
「揺るぎない意志」が表現できれば、あいつは野球を辞めたっていいと思っているので、それが今のところいい方向に出ている気はしています。

tonarinoyj 『BUNGO-ブンゴ-』1話。台風の中、壁あてをし続ける主人公のブンゴ。

みかわ先生 私は天才の人がすごく好きで、それだけしかできないとか、人生全部懸けている人に興味がありました。自分でも、漫画の才能って何だろうって思うことがあるので、自問自答をしながら描いていますね。

 

取材の極意“Twitterこそ最先端”

――野球漫画を描くうえで取材にもいかれたりするのでしょうか。

二宮先生 僕の知り合いにプロ野球選手を目指していらっしゃった方がいて、その方を介して野球の関係者の方にお話を聞きに行ったりします。

みかわ先生 人脈ですね。

二宮先生 そうなんですよ。「飲み会ありますけど来ます?」って呼ばれて行って、そうしたらその人たちがいて、話を聞いて帰ってくるというのが一番多いです。

みかわ先生 私は高校野球の地方予選に行ったりしています。千葉の方とか、神宮球場とか。あとは、夫が野球を本格的にやっていた人なので身近に取材の相手がいる感じですかね。

二宮先生 いいですね。生々しい情報がそばで聞けるのは。

みかわ先生 シニアの取材とかもされてますよね?

二宮先生 シニアも、見学に行かせてもらったりしていました。友人づてに全国大会を見に行って、ベンチや裏に入らせてもらったりして。

みかわ先生 週刊連載の合間に取材に行かれたりするのは二宮さんの凄いところでもありますよね。

二宮先生 変に理屈を並べないといけないときがあるので、取材に行くなどして色々と調べないと『BUNGO-ブンゴ- 』はきつくなる。
ぼく自身、野球はそこまで詳しいわけではないのでもう一つ二つ奥に入らないと、多分、読者の方が驚くものは出せないと思っています。前のバスケットの漫画が終わったときにちゃんと取材しなきゃなと強く思って、それからはきちんとするようにしています。

――取材に行かれる以外にはどのような情報収集を行っているのでしょうか。

二宮先生 TwitterやYouTubeはよく見ています。
野球、すごい知識ある人が動画や情報を挙げているので、それを見ることが多いですね。

――てっきり本や雑誌で資料を集めているのかと思っていました。

二宮先生 実は本に出る情報ってすでに古いものだったりするんです。本になるころにはその情報って結構みんな知っている。Twitterとか現場では、もう二つぐらい先のことをやっているので、描く者として、先の情報を出す、読者の1歩先をいくのには本や雑誌だと少し遅いかなと体感しています。ただし、情報にとらわれ過ぎない。バランスですね。

 

好きなシーンはここだっ!!

――お互いの作品で印象に残っているシーンはありますか。

みかわ先生 私はもう瑛太の彼女がひど過ぎて、本当に笑ってしまいました。パンチラも誰得なんだって(笑)

tonarinoyj 『BUNGO-ブンゴ-』コミックス14巻第133話にて初登場する瑛太の彼女・ゴリカ。

二宮先生 あのパンツの柄は、うちのスタッフにエロ漫画を描いている人がいて、そいつに「パンツの柄を頼んだ」って言ったら「わかりました、僕のとっておきのパンツ捧げます」って。それで、一番こだわりの……。

みかわ先生 とっておき。(笑)いいパンツでした。ゴリカ好きですね。

二宮先生 編集さんにも、富士ヶ丘シニア戦で打ち合わせのたびに、そろそろあの瑛太の彼女出しませんかと提案されたりします。「立ち上がって、瑛太」「頑張って」みたいな……。結局出さなかったんですけどね。

みかわ先生 プールに瑛太と間瀬が飛び込むシーンも面白かったです。

二宮先生 突然脱ぎだしてね(笑)。ああいうの、僕も面白いなと思って描いていますけど、「ギャグだよ!」と描かないように気を付けています。この人たちは真剣。端から見たら滑稽というのが、一番いいかなとは考えていて。それで読者の人に笑ってもらえたら嬉しいですね。

――二宮先生の『忘却バッテリー』で印象に残っているシーンを教えてください。

二宮先生 29話の見開きで四人がどーんと出てくるところ。1話目と同じ絵の見開きが29話でも出てくる。

tonarinoyj 『忘却バッテリー』1話目のカラー扉。

二宮先生 29話までを読んでいて『忘却バッテリー』の連載はずっと続いていくだろうなっていうのは分かっていたのだけれども、あの回でハネるなって思ったんです。あれは衝撃の回でしたね。

みかわ先生 うれしいですね。

二宮先生 そのとき多分、LINEを送って言ったんです。あれ、すごかったぞって。

みかわ先生 一、二回、送ってくれたときがありますね。

二宮先生 すごいですよ。一話目の見開きは明るいポップな感じなんですよ、四人の顔が。でも、29話目まで読むとみんな険しい顔に見える。コントラストがきいていて恰好よかった。

みかわ先生 あれを描いたことで私も、もう逃げられない、野球を描かなきゃいけないっていう……。覚悟が出来ましたね。

二宮先生 自分の気持ちも乗ったんだね、あのとき。

 

激論!「米村論争」 キャラクターのビジュアルについて

tonarinoyj 主人公の文吾とバッテリーを組む捕手の一年生・米村。コミックス11巻第100話で初登場。

二宮先生 一度だけみかわさんに怒られたことがあるんです…。
文吾を米村っていう一年生とバッテリーを組ませたんです。そしたら「何でチリチリパーマと組ますの」、「えーっ」、「イケメンの子と組ませなきゃだめじゃない」って。

みかわ先生 主人公の文吾が組む大切なバッテリーですよ。二宮さんは女性ファンもちょっと欲しいなとおっしゃっている。なのに何で米村なんだって。

二宮先生 「なるほど…」と思いました。女性の意見はこうかと思って。

みかわ先生 凄くいいやつなんですけどね。

二宮先生 もう、いつ雨降らしてイケメンにしようかなって思っていますよ(笑)。『花より男子』の道明寺みたいに(笑)チャンスは狙っています。反省を生かして。

みかわ先生 いまだに組んでいますもんね、米村と。

二宮先生 組んでる組んでる。あいつ重要キャラとして……。

みかわ先生 重要キャラなんですか?(笑)

二宮先生 ちょっと、言い過ぎじゃない?(笑)傷つくよ…。でも、貴重な意見ですよね、女性の。
みかわさんの『忘却バッテリー』は、スリムな恰好いい子たちが野球をやっているもんね。
スーツでバット振っているのとか、僕、一生思いつかないと思う。「振りづらくないの?」とか「革靴だと踏ん張りきかないよ」とか思っちゃって(笑)。
でも、恰好いい。いいなあと思う。絶対今やったら、さすがにパクりだとバレるからなぁ。

tonarinoyj 『忘却バッテリー』第39話カラー扉。

二宮先生 あと、『忘却バッテリー』は色があったりするからいいよね、そのキャラのね。

みかわ先生 戦隊物みたいに分ける。色とか数字とかで自分のキャラを持つのが好きなんです。

二宮先生 アイドルみたいで良いよね。これが『忘却バッテリー』の武器ですね。

――キャラクターの見た目やイメージについてお話がありましたが他に気を使っていることなどはありますか。

みかわ先生 野球漫画はキャップをかぶるのがえぐいですね。

二宮先生 えぐいですね。

みかわ先生 すっごくつらいです。描き分けが。

二宮先生 『H2』のあだち充先生が何故あんな浅いかぶり方させているのかと思ったら、見分けつかなくなるからだと野球漫画を描くようになってから気が付きましたね。

みかわ先生 ふわっとね。ふわっとかぶせないと。キャラデザ、キャップかぶらせた上でやらないと、厳しいです。

二宮先生 ほんのりした悩みですね、我々のね。

みかわ先生 たまに野球部なんだから坊主にしろって言われることがありますがそんなことしたら…。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

みかわ先生 『忘却バッテリー』では、シニアの時代を結構省いて描いています。単語でしか書いていないところがあると思うので、どんなものなんだろうというのを知りたいのであれば、『BUNGO-ブンゴ-』を読むのはすごくいいかと思います。女性でも、野球を知らない人でも読みやすくつくってくれているので、ぜひ読んでほしいなと思っています。

二宮先生 そうですね。『忘却バッテリー』のようなイケメンがたくさん出てくる漫画を、本当は僕も描きたいです。ほんとうは。そう思っているので、『忘却バッテリー』ファンにも認められるようなイケメンを描きたいなと思っています(笑)

――本日は有難うございました。

 

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