「面白い」を貫き通せ!! 今石洋之スペシャルインタビュー

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『天元突破グレンラガン』『キルラキル』『Panty & Stocking with Garterbelt』『サイバーパンク:エッジランナーズ』――唯一無二のスピード感と圧倒的な熱量で観る者を魅了するアニメーション監督、今石洋之さん。その創作の原点から現在地まで徹底解剖する特別インタビュー!

 

人物紹介

今石洋之
1971年10月4日生まれ。アニメーション監督・アニメーター。多摩美術大学卒業後、1990年代にガイナックスへ入社し、『新世紀エヴァンゲリオン』などでアニメーターとしてキャリアをスタート。2004年『DEAD LEAVES』で監督デビュー。2007年にはテレビシリーズ『天元突破グレンラガン』で初のシリーズ監督を務め、同作で文化庁メディア芸術祭優秀賞などを受賞する。2011年に大塚雅彦らとともにアニメ制作会社TRIGGERを設立し、以降『キルラキル』『プロメア』『サイバーパンク:エッジランナーズ』など話題作の監督として活躍。現代アニメ界を代表するクリエイターの一人。

 

◆今石監督の原点――「絵で伝える」という選択

――アニメーション監督として、どのように作品に関わっているのか教えてください。

今石:一番手を動かすのは絵コンテですね。実際の作業としては打ち合わせや発注も多いんですが、自分の場合はもともとアニメーター出身なので、言葉で説明するよりも絵で伝えるほうが自然なんです。たとえば自分は脚本を信頼している方にお願いすることが多いのですが、ストーリーを客観的に捉えた上で、どこを強く見せるか、どこを止めるか、どこにメリハリをつけるか――自分の生理的な感覚に則って設計をするのが自分の仕事です。絵コンテは単なる設計図というより、「絵で指示を出すためのもの」で、自分の監督としての一番重要な仕事だと思っています。

――「生理的な感覚」とは何でしょうか。

今石:説明が難しい領域なんですけど、自分の中から湧き上がってくる好みや欲求みたいなものですね。漫画家の方は全部自分で描くので、その感覚が自然と作品に反映される。でもアニメは分業なので、それをそのままでは共有できない。だから自分の好みをなるべく具体化して、他人に描いてもらうための設計に変換する必要があるんです。

――その感覚はどこから来ているのでしょうか。

今石:やっぱり子供の頃に観たアニメの影響は大きいですね。特に中学時代に観た『未来少年コナン』は衝撃でした。「こんなに面白くていいのか」と思いましたね。『あしたのジョー』の出﨑統さんや『機動戦士ガンダム』の富野由悠季さんだったり、当時のアニメーション業界を牽引していた方々の影響はいまだに大きいです。また高校時代は同人誌を執筆していたこともあって、漫画の影響も少なくないと思います。江川達也さんの『BE FREE!』や島本和彦さんの『逆境ナイン』、あとは伊東岳彦さんの『宇宙英雄物語』なども原点になった作品ですね。絵が上手いのはもちろんですが、物凄い密度と、感情の強さと、何よりスピード感に圧倒された記憶があります。そういった勢いやインパクトの感覚は、原点と言っても良いかもしれないです。

 

◆「ルールを壊し、速さを設計する!?企画制作の心得とは。

――制作において大切にしているルールやこだわりなどはございますでしょうか?

今石:明文化したルールはあまり作らないですね。長く一緒にやっているスタッフとは、「こういう感じでいきたいよね」という感覚が共有されているので、それで成立している部分が大きいです。同じ熱量で、同じ方向を向いている人たちと一緒に仕事をすることがこだわりかもしれません。あと、はっきりとルールを決めると、それを破りたくなってしまうので(笑)。

――「ルールを破る」という欲求は作品にも影響しているのでしょうか。

今石:ありますね。普段はみんなルールを守って生きているから、どこかでストレスが溜まる。その反動で、作品の中でそれを壊すと気持ちいいのだと思います。ただし、ルールを破る理由がないと成立しない。単に乱暴なだけだと不快なキャラクターで終わってしまうので、「なぜそれをするのか」が重要なんです。そこに納得感があると、爽快感や痛快さに変わって愛されるキャラクターになっていくと思います。破るためのルールから考えて、手間になってしまうこともあるんですが(笑)。

――企画もそうした発想から生まれるのでしょうか。

今石:確かに体制に反発することが成立する世界観は逆算して作るとは思うのですが、企画の着想は基本的に「その時の気分」を大事にしてますね。『グレンラガン』のときは真面目なことをやろうと思ったし、その反動で『パンスト』では真面目じゃないことをやりたくなった。特に『グレンラガン』はテレビシリーズの初監督作として、上手くいったのですがやれなかったこともありました。それを踏まえて「もっと好きなことやっちゃおう」とつくったのが『キルラキル』です。前作との関係性の中で、「次はこうしたい」という気分が出てきます。ただそれだけだと形にならないので、脚本家や他のスタッフと話し合って作品に落とし込んでいく形で制作していますね。

――その時その時の異なる「気分」を大切にして出来上がった作品の中でも、一貫していることはあるのでしょうか。

今石:「面白いものを作りたい」ということだけです。『サイバーパンク』のようなシリアスな作品や『宇宙パトロールルル子』のようなコミカルな作品では、面白さの種類は変わっていく。それぞれ違った面白さなんですが、「面白さのレベル」はしっかり揃えていきたいと思っていますね。ただ、自分の感覚だけでやると手癖もあって着地点が割と似てしまうので、作品ごとに出発点をとにかく離しておくことは意識しています。

――「面白さ」の具体的な判断基準はあるのでしょうか。

今石:一つは「純粋なお客だった頃の自分が見たいかどうか」です。さらに言えば、アニメが好きじゃない人でも興味を持つか。その視点は常に持つようにしています。

――テンポの良い展開や疾走感抜群なアクションシーンなど、今石監督の作品に「速さ」が共通しているように思えます。

今石:「速さ」といっても1種類ではなく、まずは「物理的な時間としての速さ」です。昔のカートゥーンのような、せわしない動きの面白さです。もう一つは、情報量と密度によって生まれる体感の速さだと思っています。たとえば主人公の人生をすごく圧縮した物語。30分しか観ていないのに、30年分の時間を体験したような感覚になることがあるじゃないですか。そういった「圧縮された時間」の感覚もかなり好きです。この両方が大切だと思っています。作劇的には、ちょっと多めにアイデアを足して、尺に入らない分を削っていくことで、「無駄な間」を削るようにしています。

―― 一方で、『キルラキル』の変身シーンのように、一枚絵を見せる「止め」の演出も印象的です。

今石:漫画でいう見開きみたいな表現として意識していますね。重要な場面でドンと止めて、「ここが大事だ」と強く伝える。映像はどうしても流れていってしまうものなので、その中で一瞬のインパクトをどう作るかが大事になる。速さっていうのは、単に動かすことではなくて、そういう強弱や密度の積み重ねで成立するものだと思っています。

 

◆『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』を経て――今石監督のこれからとは。

――最新作『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』もかなり攻めた「ルール破り」の作品でしたが、前作からどういった変化がありましたか。

今石:いまは正直、あの頃みたいには作れないんですよね。15年経って時代も変わっていますし、自分自身も15年歳を取ってしまっているので、あの時のような無邪気さや無責任さでは作れない。なので、前作は今回の自分にとっては「原作もの」みたいな感覚もあって、当時の自分が作ったものを原作としてどう扱うか、という難しさもありました。その中で意識したのは、「裏切らずに裏切る」ことです。昔のファンに向けて期待は守りつつ、同じことを繰り返すだけでは意味がない。そもそも『パンスト』自体が、前作『グレンラガン』のファンを裏切るような企画だったので、その精神はどこかに残しておきたいと思っていました。一つ具体的に言えば、キャラと世界観をそのままに、時間を前作からの直結で作ったことでしょうか。こんなに馬鹿馬鹿しい話の「続編」をここまで真面目に作る、ということを裏切りとして考えていましたね。

――ご自身の変化についてはどう感じていますか。

今石:若い頃のような無邪気さでは作れなくなっていますね。経験がある分、「ここは無理だな」と分かってしまう。ただ、その代わりに「どうやってバレないようにやるか」という発想は出てきました。一見ルールを守っているようで、実は少し逸れている。そういうやり方の方が今は面白いと感じています。

――今後の目標については。

今石:真面目なこととふざけたことの両立ですね。どちらかだけでは物足りない。そのバランスを作品ごとに探していきたいと思っています。配信サービスはじめ、発表媒体もどんどん増えているので、色々試しつつ、また面白いことができるといいですね。