銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱

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文・構成:武田創

2018年にTVシリーズ「邂逅」が放映され、そしてこの秋、9月27日から全三章に渡る劇場上映シリーズ「星乱」が上映される、『銀河英雄伝説』の新しいアニメである。今回はその劇場上映を控えて、監督の多田俊介氏にその制作や作品に対する思いを特別インタビューでお届けする!

 

多田俊介監督プロフィール

監督として「黒子のバスケ」シリーズ、「スタミュ」シリーズ等数々のヒットアニメを手掛け、SF作品では「銀河英雄伝説外伝 朝の夢、夜の歌」に演出として参加。「宇宙戦艦ヤマト2119」では反射衛星砲と宇宙戦艦ヤマトの激戦を描いて好評を博した第6話「冥王の落日」の演出を担当。「攻殻機動隊ARISE」では「boder:2 Ghost Whispers」で絵コンテを担当。本人も大の「銀河英雄伝説」ファンである。

 

――ヤングジャンプの読者の中には『銀河英雄伝説 Die Neue These』をまだ見られてない方もいるかもしれません。その方たちに向けて『ノイエ銀英伝』の見どころポイントを教えて下さい!

多田◇歴史のある作品なので『銀河英雄伝説』を知らずにタイトルだけで興味を持って観始める方というよりは、最初はきっと昔からのファンの方が観るんだろうなあ、と思っていました。なので、初めて「銀英伝」に触れる方へのアプローチは難しくもありましたが、キャラクターやストーリーの広がりで少しずつ興味をもってもらえるように作っているので、是非その広がりを観てほしいです。

――制作するにあたって、色んな役割の方がいて作品を作られていると思うのですが(漫画に、アシスタントさんなどがいるのと同じように?)チームで制作するにあたって意識していることはありますか?

多田◇集団作業なので、ズレがないようやっています。どのエピソードがどの話に入るのか、構成できっちり設計図を決めて、そこに向けて仕上がるように作っています。

――決まった枠組みの中で、ディティールを詰めていっているということでしょうか?

多田◇僕自身が考えている事を、事前にすべてビジュアルにする事は出来ないし、最初にスタッフに見せる事も出来ません。なので、作業をしながら細かい部分を共有していくという作り方をしています。この共有していく、というのが大変でした。他のアニメもそうですが、僕の考えているギミック――戦い方とか、意図とかは、その都度確認して、作りながら僕の考えを伝えていくしかないので。

――大変な苦労ですね!

多田◇例えば建物を壊すにしても、最初にデザインが必要なんです。デザイナーがデザインして、実際描くのはアニメーターや3Dディレクター。更にパーツの色を決める色彩設計というスタッフもいる。それぞれ別個にかかわる人間がいるので、一つの演出にしても、手がかかってます。そういう苦労は、常にありますね。ですが漫画家さんは自分でデザインして自らも描くということをしている。これは本当にすごいと思います(笑)

――現在ヤングジャンプでのコミカライズ版では「要塞対決」のエピソードを連載していますが、今回の劇場上映では、どのあたりまでのエピソードが観られるのでしょうか?

多田◇リップシュタット戦役まで。小説の2巻までと、最初に区切りとして決めて作りました。ただ、今回の「邂逅」と「星乱」に関しては、話数に収めるには苦労しました。

――というと?

多田◇僕のディレクションの方向性は「なるべくキャラクターにカメラを近づけること」。そのため、セリフだけではなく、感情の「間」を作らないといけない。そうするとただでさえエピソードは詰まっているのに、使える時間が更に減っていくという事になってしまいました(笑)。
なので、やりたい事が収まらない部分もありました。キャラクターのリアクションとか、原作の行間をもっと表現出来たらとは思っていました。

――今回のエピソードでは、ラインハルトとヤンにそれぞれ敵対する勢力として、リップシュタット貴族連合と救国軍事会議が登場すると思いますが、そういった「敵キャラクター」での見どころがあれば教えてください!

多田◇僕はウェットなものが好きなんです。浪花節というか。その辺のキャラクターの「解釈」に注目してもらえると嬉しいです。僕の個性が出ていると思うので。

――劇場上映ならではの楽しみ方が、あったりしますでしょうか?

多田◇TV放送のファーストシーズンと今回の劇場上映で、画作りに関しては実は変えていないです。ただTVと劇場で印象が違うタイトルだと思います。僕らは画面に声や音楽を付ける作業を、映画館のような大きい画面のスタジオでやっているので、劇場で映える画になっていることを知っていますが、TVでしか観てない方は驚かれると思います。特に艦隊に関してはかなり作りこんでいて、レンダリングに二日かかるような超巨大な戦艦の3Dモデリングデータなども使っていますから。作り手の本来意図していたものは劇場の方が観られると思っています。

――今回の全三章を通して、ラインハルト及びヤンの人間関係に大きな変化があると予想されますが、どう言った意気込みで臨まれましたでしょうか?

多田◇ラインハルトは孤高の英雄というイメージですが、とても「パーソナル」な人間だと感じています。大きな舞台を動かす存在でありながら、キルヒアイスやアンネローゼの影響がものすごくあって、感情で動いている。その辺をラインハルトで表現しようとしています。一方ヤンに関しては真逆な印象です。周囲に仲間と理解者がいて、支持する人間が多いのですが「誰かに頼って生きてはいない」という印象です。だからと言って冷たい訳ではないのですが、ブレない。ここが二人の一番大きな違いだととらえています。情に影響されるラインハルトと、ある意味そうではないヤン、という違いを意識して作っています。

――最後にヤングジャンプの読者に一言いただけたらありがたいです!

多田◇集団作業なので困難もあるのですが、総合的な力が結集したものが劇場では感じられると思います。画面のラインハルトやヤンだけではなく、美術・映像・音響など劇場でしか体験できない事がたくさんあります。その体験を是非、味わっていただければと思います。

――どうもありがとうございました。

 

 

『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』
劇場上映情報

銀河英雄伝説

各章3週間限定劇場上映!!
第一章…9月27日(金)より
第二章…10月25日(金)より
第三章…11月29日(金)より