春ヒコ、ヤンジャン熱愛報道中。

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今回は、お笑いコンビ「春とヒコーキ」のお二人にインタビューを実施した。
YouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」は登録者数200万人を突破。
直近では単独ライブ「モンキービジネス」を開催するなど、まさに今、お笑い界の最前線を走り続ける存在だ。
そんなお二人は、筋金入りの漫画好きとしても知られている。
今回は「ヤングジャンプ」を軸に、漫画論から芸人論まで、たっぷりと語ってもらった。
(取材・文/ヤングジャンプ編集部 撮影◎松田嵩範)

 

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<ヤングジャンプ=ジャンプのエッチ版だと思っていた>

――早速ですが、ヤングジャンプの作品の中で好きなタイトルはありますか?

ぐんぴぃ いやー、むちゃくちゃありますね。どうしよう。

――本当ですか。

ぐんぴぃ …選べないです!

――すばらしいです、ありがとうございます。

ぐんぴぃ うん、いっぱい立ち読みしてきましたからね。

土岡 立ち読みかい。

――(笑)

ぐんぴぃ ベタで言うと『キングダム』『リアル』。あと『B型H系』ですね。俺、『B型H系』からヤンジャンに入ったんですよ。

土岡 よく言ってるよね。

ぐんぴぃ 当時、ヤンジャンのことを「ジャンプのエッチ版」だと思ってたんです。「ヤング」ってエッチって意味らしいぜ、みたいな。

土岡 いやいや、普通に「若い」って意味だからね。

ぐんぴぃ そう言われて「本当?」って思って。で、パッとヤンジャンを開いたら『B型H系』が載ってる。「おいおい、やっぱりエッチじゃねぇか」って。 山田っていう女の子が、とにかくエッチしたいんだけど、空回りして全然できないっていう話で。四コマで読みやすいのも嬉しかったですね。

――雑誌の入り口としては、かなり強烈ですね。

ぐんぴぃ あの作品が「バキ童チャンネル」の原点ですよ。『B型H系』みたいなエッチをやりたい、ってことで「バキ童チャンネル」をやってますから。

――(笑)

土岡 僕が「支えられた」という意味で好きなのは 『干物妹!うまるちゃん』(以下『うまるちゃん』)ですね。 うまるちゃんのアニメを観るのがライフワークでした。 うまるちゃんって、とにかくだらしないキャラクターじゃないですか。 家ではずっとだらけてるし、お兄ちゃんからもめちゃくちゃ怒られる。 普通の人なら反面教師にしそうですけど、 僕は「なるほど」って思ったんですよ。 要は、ポテチとコーラを買ってきて、 時間を無駄にすればいいんだな、って。 贅沢の仕方を教えてもらった感じでした。

――人生の教科書にしていたわけですね。

ぐんぴぃ 『うまるちゃん』がヤンジャンにある、っていうのがいいんですよね。 あれが四コマ専門誌とか、いわゆる萌え系の雑誌にあったら、 正直ちょっと身構えちゃうと思うんです。

――ヤンジャンらしくないから読みやすいと。

ぐんぴぃ 当時のヤンジャンって、ページをめくれば 春秋戦国時代の中国で人が死んでるし、 別のページでは喰種が人間を襲ってる。 その中に『うまるちゃん』がいる。 そのバランスが、ちょうどいい。

土岡 雑誌全体として、ってことか。

ぐんぴぃ 『エルフェンリート』の岡本倫先生なんて、 もうヤンジャンを体現した作家だと思うんですよ。 エッチでフワフワした空気かと思ったら、 突然、人体切断が起きる。 普通にトラウマですよ。

――油断しているところに来ますよね。

ぐんぴぃ そういう意味で、ヤンジャンには本当に大人にしてもらいました。 エロスもあるし、子どもにはちょっと怖い物語もある。 それに、少年誌的な「夢のある勝ち方」じゃなくて、 もっと生々しい勝ち方を教えてくれた。

土岡 綺麗じゃない勝ち方。

ぐんぴぃ 『キングダム』なんて、 努力・友情・勝利じゃなくて、 「討った敵全員の目をくり抜きました」みたいな。

土岡 相手の感情を乱す戦い方だよね。

ぐんぴぃ 乱して、崩して、倒す。 「ええ?」ってなるけど、 あれは忘れられない。 ヤンジャン、楽しい。

 

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<ビジュアル、ギャップ、そして”生き方”に魅力あり>

――続いて、ヤングジャンプのキャラクターの中で、 特に思い入れが強いキャラクターがいれば教えてください。 また、どんなところに惹かれているのかも含めて伺えればと思います。

ぐんぴぃ やっぱり『GANTZ』の多恵ちゃんですね。 『GANTZ』の多恵ちゃんが一番いい。本当に健気なんですよ。 見た目は地味な女の子ですから、主人公の玄野は最初、 ちょっと罰ゲームみたいな感覚で付き合い始めるんですけど、 だんだん可愛くなっていく。

土岡 そこから、『GANTZ』のあの世界に巻き込まれていく。

ぐんぴぃ 宇宙船に連れて行かれて、 訳の分からない世界に放り込まれて。 それでも玄野のことを信じて、一緒にいようとする。 あのリアリティは、本当に胸に来ましたね。

土岡 『GANTZ』で言うと、僕は田中星人が好きですね。 映画での印象が強いんですけど、とにかく怖かった。 意味も分からず追いかけてくる感じが、 子どもの頃に見た悪夢、 全部こいつだったんじゃないかと思うくらい。

――ビジュアルだけでも伝わってくる恐怖感があります。

ぐんぴぃ 確かに、あれは怖かったですね。

土岡 あと、僕が好きなのは 『かぐや様は告らせたい』の石上ですね。 最初は、斜に構えてリア充を見下してるキャラだと思うんですけど、 過去が明かされると、全然見え方が変わってくる。 好きな女の子を守るために、 自分が悪者になる選択をする。 その結果、ずっと嫌われたままなんだけど、 それでもいいって背負ってるのが、めちゃくちゃ格好いい。 コメディ作品なのに、 あんなエピソードをぶち込んでくるんだ、って驚きました。

ぐんぴぃ 赤坂先生は天才ですよ。

土岡 藤原書記も、キャラクターとしては大好きですけどね。

――方向性の違う「好き」な気もしますが。

ぐんぴぃ かわいいよね。

土岡 特にアニメのエンディングで藤原書記がダンスする回。 あの回は何回も見ました。

ぐんぴぃ 『かぐや様』は、 ギャグもシリアスも、 全部ちゃんとキャラクターの魅力で成立してるのがすごい。 あと『キングダム』で言えば、 嫪毐とか、桓騎とかも好きですね。 桓騎は、ずっと好きでした。 頭が良くて、奇策ばっかり使うけど、 結局「基礎がない」っていう弱点があって負ける。 それがめちゃくちゃ示唆的で。 当時の自分は、 トリックスターな桓騎に憧れてたけど、 やっぱり基礎だな、って思わされました。

 

<芸人目線で見る掛け合いの妙!?>

――さて、ヤングジャンプ作品について たくさん語っていただきましたが、 ここからは漫画の中で 「このセリフ回し、掛け合いはすごい」と感じたシーンを 教えてください。

ぐんぴぃ 『東京喰種』の金木くんの 「この世のすべての不利益は当人の能力不足」 というセリフですね。 闇堕ちしたときに言う言葉なんですけど。

土岡 刺さるよね。

ぐんぴぃ 刺さるんですよね。 まあ、思考停止ではあるんですけど(笑)。 失敗には本当はいろんな原因があるんだけど、 それを全部自分のせいだと思い込むことで、 がむしゃらに進める。 一時期、かなり支えになってました。

――言葉としては危ういのに、 推進力にもなる。だからこそ読者に残るんでしょうね。

ぐんぴぃ キャラクター同士の会話で言えば、 やっぱり『かぐや様は告らせたい』になるのかな。 あと、『【推しの子】』もすごく良かったです。

土岡 『かぐや様』は、 主人公二人が出し抜き合おうとすればするほど、 どんどん二人ともバカになっていく感じが面白いんですよね。 お互い「相手の上に立とう、立とう」と 掛け合いをしてるのに、 読者から見ると、 両方ともどんどん下がっていく。

ぐんぴぃ どっちもボケなのに成立してる。 あの脚本力は本当にすごいですよね。 『【推しの子】』で言うと、 アクアと有馬かなの掛け合いも、すごく好きでした。

土岡 ルビーがジュースを飲んで 「まずいから悪口を書こう」って言ったときに、 有馬かなが 「商品について何か言ったら、 関係者5人は見るから」って止めるところ。 あれ、地味だけどすごいなって思いました。

ぐんぴぃ ちゃんと教えてくれるよね。

土岡 僕らも感想を軽く言っちゃうけど、 関係者が見てる可能性って、 確かにあるんだなって。

 

<『GANTZ』によって壊された中学生>

――では続いての質問です。 YouTubeチャンネルで、 漫画に関する企画を多く発信されていますよね。 その際に、何か心がけていることはありますか?

ぐんぴぃ 基本的には、 「この漫画、俺しか読んでねえだろ」 みたいなのを、 皆にも読んでもらいたいって気持ちが強いですね。 売れてる漫画だったら、 その中でもめちゃくちゃマニアックなシーンとか、 「これ俺しか覚えてないだろ」 みたいなところを話したくなる。

土岡 『ONE PIECE』のツメゲリ部隊みたいな。

――ツメゲリ部隊。 動画一本、撮られてましたよね。

土岡 やりましたね。 ツメゲリ部隊を真剣に考察する、みたいな。

ぐんぴぃ そうですね。ツメゲリ部隊。 みんな忘れてるだけで、 あんなすごい人たち、いないぞっていう。 ヤンジャン作品とかは特に、 「これ、俺しか見てないんじゃないか」 って思う瞬間があるんですよ。 色んなジャンルの作品があるからですかね。 まだ読んでいない人に作品をコマ単位で紹介して、 このコマがすごいんだ、 味わってほしいんだ、みたいな。 そこまでマニアックでも、 「そこがいいんだよな」 って言ってくれる人が、 コメント欄に一人は必ずいる。 それが、すごくうれしいんですよね。 『GANTZ』の3巻とかも、 マニアックですけど良いんですよね。 エッチなんです。エッチばっかりで申し訳ないんですけど。

――(笑)

ぐんぴぃ 僕ね、中学生のときに『GANTZ』を読んで、 それまで、めちゃくちゃおとなしい子だったんですよ。 声も小さいし、人見知りで、 下ネタも言えなかった。 でも『GANTZ』を読んだら、 エロもグロもナンセンスも、 全部やりたい放題で。 「こんな漫画が人気なら、 おとなしく優等生でいるの、 バカらしいな」って思って。 全巻読んだ翌日から、 クラスで奇声を発するようになりました。

土岡 無理やり、こじ開けられて。

ぐんぴぃ 『GANTZ』に、 人生を壊されたんです(笑)。 多恵ちゃんのシーンとか、 脳を焼かれましたね。 『GANTZ』みたいに、 むちゃくちゃであっても、 人に好かれるんだ、 って教えてもらった。 爆笑問題の太田さんが、 何にも感動できなくて塞ぎ込んでいた時期にピカソの絵を見て救われた、 って話がありますけど、 構造は同じなんですよ。 ただ、ピカソのほうが上品ですね。

土岡 ぐんぴぃの場合は結果が、 「奇声を上げる」になった。

ぐんぴぃ 全部、 『GANTZ』から始まってる。

土岡 僕はどちらかというと、 『かぐや様』とか『うまるちゃん』のような作品に 救われた、って話をしたくなりますね。

――同じ漫画の話なのに、 救われ方が真逆で面白いです。

土岡 主人公の男の子とのやり取りを見てるうちに、 いつの間にか 「この女の子が僕に こうしてくれた」 みたいな気持ちになる。 だから、漫画を紹介するというより、 「この女の子が、 僕にこんなことを言ってくれたんです」 って話してしまう。

――実体験として語られるわけですね。

 

<バキ童チャンネルは『ゴールデンカムイ』である>

――お二人は今度、 単独ライブを控えていらっしゃいますよね。 ネタや掛け合いの構成を考えるとき、 特に意識しているポイントや、 大事にしていることは何でしょうか。 以前ネタを拝見して、 いろんなキャラクターに扮されていたり、 歯医者さんなど、 特殊な場面設定が多い印象を受けました。 その発想は、 どこから来ているのでしょうか。

ぐんぴぃ これは、 土岡がやってますね。

土岡 何でしょうね……。 でも、欲望ですかね。

――欲望。

土岡 現実世界ではやっちゃいけないかもしれないけど、 「こういうこと言ってしまいたいな」 「やってしまいたいかもな」 っていう欲望を、キャラクターに乗っけて言わせる、 みたいな感覚です。 だから、日常の繊細な“あるある”から広げる、 みたいなのは全然できなくて。 欲望から入って、 ちょっと漫画とか映画の悪役みたいになれたらいいな、 と思いながらボケを作ってます。

ぐんぴぃ 悪役ね。確かに。 でも、土岡って 「罰したい」みたいな気持ちもあるよね。

――罰したい、とは?

ぐんぴぃ 土岡って、 大学卒業してからニート期間が 結構長いんですよ。

土岡 そうですね。 ずっと親の金で暮らしてました。

ぐんぴぃ 一回もバイトしたことないやつなんですけど(笑)。 でもコントでは、 僕がニート役で、 土岡が 「そんなくだらねえことしてないで 仕事しろや」 って怒るネタが来るんですよ。 あれ、どういうセラピーなんだろうって。

土岡 セラピー(笑)。 ミニチュアで街を作って心を癒すみたいな。

ぐんぴぃ 俺のほうを自分に見立てて、 「おかしいだろ」って言って笑いを取る。 いや、ニートはお前だろ、って。

土岡 でも、しょうがないじゃないですか。 ぐんぴぃのほうが、 その役が似合うなら。

ぐんぴぃ すごい嫌ですね。

土岡 だから、 僕らのコントって、 常に「欲望」と「常識」が ぶつかり合う構造なんですよね。

 

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――ボケとツッコミというより、 「欲望」と「常識」の衝突だと。

ぐんぴぃ そう。 僕はニートだけど、 常識側ではいたいんですよ。 「自分は間違ってない」って思いたい。 そのためのセラピーというか。

土岡 ぶつけ合うことで、 自分の中で整理する。

ぐんぴぃ そうそう。 悪役がいることでね。

土岡 やっぱり、 悪役で説得力のあるキャラクターって、 漫画にもたくさんいるじゃないですか。 そこが、格好いいなって思うんです。 でも、漫画でも主人公って、 結構損してるなって思うんですよ。 悪役は、 やりたい放題やって人気が出て、 様になるけど、 主人公はずっと正攻法で 立ち向かわなきゃいけない。 例えば、『ゴールデンカムイ』なんて特にそうで。 鶴見中尉をはじめ、 次々と変態が出てくるじゃないですか。 自分の欲望を 「俺はこういう衝動を抱えて 生きたいんだ」 って、全力で表現してくる。 でも、 なんでその表し方なんだよ、 みたいな。 裸でいたり、 動物とセックスしたり(笑)。 そういう変態たちが 次々に出てくるのを、 主人公側は、 ちゃんと処理していかなきゃいけない。

――エピソードごとに、 その繰り返しですよね。

土岡 そう。 終わっても、また次が来る。 ずっと一定の枠の中で 戦い続けなきゃいけない。 それが、 ボケとツッコミの関係に、 ちょっと似てる気がするんです。

――なるほど。 「処理し続ける側」の宿命が 似ていると。

ぐんぴぃ 僕、『ゴールデンカムイ』が、 あれだけ世に受けたのは、 結構びっくりしたんですよ。 普通、少年誌だと、 一本のストーリーがあって、 そこに仲間が集まって…… みたいな構造が多いじゃないですか。 でも『ゴールデンカムイ』って、 あるときはグルメ漫画、 あるときはギャグ、 あるときはストーリー、 あるときはクライムサスペンス。 ジャンルが、とにかく総力戦。 何でもいいから、 面白いものを手に持って殴る、 みたいな感じ。 正直、最初は 「この漫画、何?」 って思いました。

――最初は戸惑うのに、 気づいたら虜にされているような作品ですよね。

ぐんぴぃ それで、 「バキ童チャンネル」も、 ジャンル関係なく、 『ゴールデンカムイ』みたいに やってみよう、って 本気で思ったんです。 飯の動画も上げるし、 エロい動画も出すし、 教養っぽい話もする。 一回、 全部無視して 暴れてみよう、と。 でも、全体に 「どうしようもなさ」が たゆたっていれば、 通底していれば、 何でも見られるんだなって。 ふざけてるけど、 本気の回もある。 感動回も、ちゃんとある。

――ジャンルは散らかっているのに、 信念は一貫している。 そこが強さなんですね。

 

<コンビを組むなら「森田」と「白石」が良い>

――最後に、 ヤングジャンプのキャラクターと コンビを組めるとしたら、 誰と、どんなコントや漫才を やってみたいですか。

ぐんぴぃ 俺は、 『スナックバス江』の明美かもしれない。

――確かに明美さんは、 トーク力の高さで 何をやらせても 爆笑を取れそうな感じがあります。

ぐんぴぃ で、 あとは森田。 『スナックバス江』の森田と 組みたい。

土岡 ぐんぴぃが?

ぐんぴぃ 組んで、 ダイタクさんみたいな 漫才をやりたい。 双子漫才というか、 同じようなやつが 二人いる、 っていうのを 見てほしいんだよね。

土岡 僕は、 『ゴールデンカムイ』の白石かな。 めっちゃ売れそうな 芸人の空気が あるんですよね。 先輩にも気に入られて、 いじられる感じもあるし。

――確かに。 あの「可愛がられ力」は 芸人界でも 武器になりそうです。

土岡 あと、 体がめちゃくちゃ 柔らかいじゃないですか。 体を無茶苦茶にする シーンも多いし、 物理的に無理な体勢とかも できそう。

ぐんぴぃ ビックスモールン みたいなことを やりたいんですか。

土岡 そうだね。 体で笑いを取りたい。

――いいですね。 漫画キャラと芸人の相性を、 ここまで具体的に語れるのは さすがです。

ぐんぴぃ 最近は、 男女コンビで、 後々くっ付くようなやつも 増えてきてますからね。 そういう方向を 狙っていくのも、 ありなのかも。

土岡 なるほど。

ぐんぴぃ 『かぐや様』の伊井野ミコちゃんとか狙っていきたいです。

――最後まで、選択肢が尽きないですね(笑)。

 

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