『転生ゴブリンだけど質問ある?』TVアニメ化記念 キャストインタビュー

main

 

となりのヤングジャンプが送る転生ファンタジー『転生ゴブリンだけど質問ある?』がついにアニメ化決定! そこで今回はアキラ、カレン、クロエを演じる3名のメインキャストにインタビューを敢行。作品の魅力やゴブリンたちに関するトークはもちろん、3人のパーソナルな部分にも切り込んだインタビューをお届けしよう。

tonarinoyj

 

キャストプロフィール

戸谷菊之介(アキラ役)
ソニー・ミュージックアーティスツ所属
11月30日生まれ 東京都出身
代表作『チェンソーマン』(デンジ)『逃げ上手の若君』(吹雪)など

日笠陽子(カレン役)
i.nari所属
7月16日生まれ 神奈川県出身
代表作『けいおん!』(秋山澪)『戦姫絶唱シンフォギア』(マリア・カデンツァヴナ・イヴ)など

橘杏咲(クロエ役)
アイムエンタープライズ所属
10月12日 東京都出身
代表作『魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance』(久瀬シイナ)
『カヤちゃんはコワくない』(カヤちゃん)など

 

メインキャスト3名に作品のことを聞いてみた!

――まずはご自身が演じられるキャラクターに対する印象からお聞かせください。

戸谷菊之介(以下「戸谷」):僕が演じるアキラは前世の人間のころからそうなんですが、とにかく人に教えるのが好きなんだなって思いますね。人にものを教えて、それで成長していくのが嬉しいタイプ。そこから転じて、ゴブリンの村を自分なりに発展させて、ゴブリンたちの社会的な立場もよくしていく。そうやって自分の周りを建設していくのが好きで、そのためにいつも色んなことを考えている人物なんだと思います。

日笠陽子(以下「日笠」):カレンはこの世界における人間の枠の中で、立場と肩書きを持っている人。真面目で実力もあるから、定められた枠の中でキチンと生きてきたんだと思うんですよね。ところがアキラと出会ってゴブリンたちと触れ合うことで、彼女自身の中にあった女の子の部分があふれ出してくる。一見器用に見えていた彼女が、実は自己主張が上手くできていない、すごく不器用な人なんだとわかって、そのギャップがすごく魅力的な女性だと思います。

橘杏咲(以下「橘」:クロエは「すごく強い女の子」というのが第一印象でした。でもアキラに会って今まで触れてこなかった優しさや明るいコミュニケーションを経て、等身大の女の子らしさを得ていくんですが、その過程でストレートに感情を示す女の子なんだな、とわかる瞬間がありました。よく言えば素直なんですが、言ってしまえばあまり考えずに言葉を発する、この作品のパッション担当なキャラクターだと思います。

――原作漫画をお読みになって、この作品の魅力はどんなところにあると思いますか?

戸谷:一読して、原作の三木(なずな)先生の頭の良さ、インテリジェンスをすごく感じる作品でした。7日間しか生きられないゴブリンたちの村で、アキラが自分にできることを模索して、次第に外界との政治的なやり取りも考えていく。とても読み応えがあるし、理解できた瞬間とても面白くなる。そこが魅力だなと思いました。

日笠:私も同じものを感じたなぁ。先生の賢さはもちろん、人間社会に向けたメッセージを受け取っているような気分にもなりました。アキラはゴブリンのコミュニティをよりよくするために、とても思考を重ねますよね。優秀なリーダーが思考を巡らせて、みんなを引っ張っていくことでいい循環が生まれる。異世界でゴブリンに転生する物語ではありますが、どこか現実の人間社会を風刺するような部分ですよね。そこが面白いな、と私の心に刺さりました。バイブルにします!

橘:私はやっぱり、キャラクターが魅力だと思います。なんといっても、ゴブリンたちが本当に可愛いですよね! この「ゴブリンの可愛さ」は、私たちキャスト含め制作陣がこだわりを持っている部分なんです。アフレコ中も「もっと可愛くしよう」とディレクションされたりします。アニメを観るみなさんも、きっと自分の推しゴブリンが見つかると思います!

 

テーマトーク「もしも自分がゴブリンだったら1週間で何をする?」

tonarinoyj

ここからはテーマを設けてフリートーク! わずか1週間という短い命、キャスト3名は果たして何に費やす…?

 

橘:私は爆食い!

戸谷:いいですね~!

日笠:1週間なら、太ろうがなんだろうがいいもんね(笑)。

橘:そうですよ! 体型も肌荒れも気にしなくていいんですから。ニンニクいっぱい食べたっていいわけです。

戸谷:2日目くらいから「なんかあいつ臭いな」みたいにならない?

橘:いいや、1週間で終わるなら関係ないですね、そんなの!「爆食い」で提出させていただきます。

戸谷:じゃあ僕はめっちゃ強くなりたいです。筋トレ!

日笠:1週間で!?

戸谷:ゴブリンの身体なら、きっと1週間でも強くなれますよ。

橘:何かスキルを使って強くなれるかも

戸谷:生まれ持ったスキル次第でね、限界まで強くなってみたい。

日笠:私はね…逆に何もしない。空を見てる。

一同爆笑

日笠:空の移り変わりを見続ける。

戸谷:あの世界のゴブリンとしては珍しいタイプ! のほほんゴブリンって、あまりいないかもですね。

橘:確かに! それもアイデンティティですね。

日笠:「何もしない」を全力でやってるんですよ。

橘:おお、素敵です!

日笠:薄いか(笑)。

戸谷:いや、それも幸せかもしれないですね。

 

 

クロスインタビュー「○○だけど質問ある?」

ここからはキャストの皆さんのクロスインタビューをお届け! お互いにアフレコのことやパーソナルな部分など、自由なテーマで気になることを順番に質問し合ってもらった。

 

① 戸谷菊之介だけど質問ある?

日笠:戸谷君には役作りについて聞きたいな。最近よく現場でお会いする機会が多いんですけど、会う度に役の雰囲気が違うことが多いんですよね。今回のアキラという役どころも新鮮なんですけど、自分なりに役を掴むコツがあったりするんですか?

戸谷:コツって言っていいのかわかりませんが…僕は家で練習する時は、セリフの状況に合わせて体を動かしてますね。

橘:動きっていうのは、部屋の中を歩き回ったりするんですか?

戸谷:そうです。動き回ってますね。

日笠:へぇー、そうなんだ!

戸谷:基本的なことだし、みんなやっていることかもしれませんが、自分が演じるキャラクターが誰かと会話をするとして、立ち位置や距離感はどうなっているか、自分の役がどう動きながら会話をするかなどを、実際に動きながら考えてみるのが結構好きなんです。

橘:アキラは色んなことを説明する役どころだから、結構長台詞が多いと思うんですけど、台本にはどんなことを書き込むんですか? 例えば、どんな思いでいるかなどの感情的な部分も書き込んだりするんでしょうか。

戸谷:書きますよ。アキラに限らず、だいたいどんな役でも感情のことを台本に書くかもしれないですね。

橘:そうなんですね! 印を付けるとかだけでなく、結構細かく書くんですか?

戸谷:書くタイプですね。でも、本番中は逆にあまり見ないようにもしてるんですよ。あくまで自分の中で解釈するためにバーッと書き出して、それが終わったらあとは何も考えずいくか!みたいな感じで役作りしてます。

日笠:なるほど~

戸谷:いやいや、恥ずかしいっす。こんなことを言って、誰かに怒られないか心配ですね。

橘:そんなことないですよ。ありがとうございます、先輩!

 

② 日笠陽子だけど質問ある?

橘:日笠さんにはめちゃくちゃ聞きたいことがありますよ。

戸谷:日笠さんってアフレコ現場ではマジでムードメーカーじゃないですか。僕もそんな風になれたらな、って常々思ってるんですよ。

日笠:そういう戸谷くんだって結構ムードメーカーじゃない?

戸谷:僕はみなさんにいじってもらって、話せてるだけなんですよね。自分から話しかけるときの一発目っていうのが、どうにも出せないんですよ。

日笠:そうですねぇ、私も結構長く声優をやらせていただいているから、怖いものが無くなってきた(笑)。

※一同笑

日笠:私がもっと若手だったころは、「人見知りなんて言ってられない!」みたいな、ある種の昭和のスポ魂みたいな空気感があったんですよね。だから事務所に行くときも自分の中のスイッチを入れるクセを付けました。それは別に頑張っているわけじゃなくて、自分の中にあるモードを切り替えているだけな感じですね。

戸谷:モードですか。

日笠:もちろん大先輩に話しかけるときは緊張するよ。でもいざ自分が先輩の立場になったときに、後輩から話しかけてもらうのが嬉しかったりもするんだよね。私、寂しんぼうだからさ。ってことは、きっと他の先輩だってそうだろ!って思うようになったかも。

戸谷:おお、なるほど…。

橘:私はお芝居について聞きたいです! 日笠さんがお芝居するときに、一番大事にしてるものって何ですか?

日笠:お芝居するとき? 楽しいこと!

戸谷:おお!

日笠:私たちって楽しむために転生して生まれてきたし、楽しむためにお芝居始めたし。で、私の中の「楽しい」は常に「わーい!」って笑って過ごすことだけじゃなくて、お芝居を深掘りしていくことや、キャラクターと向き合うことも「楽しい」の範疇なの。上手くできなくて悔しいこともあるけど、全部含めて「楽しい」なんだよね。楽しくないことはしなくていいと思う!

橘:うわぁ、素敵! こんな大人になりたい!

戸谷:Hip Hopですね!

日笠:Hip Hopか!?

戸谷:今ブチ上がりましたよ、フロアが!

日笠:Hey♪ Hey♪ Yeah♪

一同爆笑

 

③ 橘杏咲だけど質問ある?

橘:私、お二人とはこの作品が初めましてなんですよね!

日笠:そう、だからまずどんな方なんだろうってところからだよね。橘さんは何者ですか?

戸谷:何者(笑)。まず、いつごろから声優をやってらっしゃるんですか?

橘:ちゃんとこのお仕事を始めたのは3年前ですね。声優を志したのは5年ほど前、私が高校生のころで、世間はコロナ禍真っただ中でした。それまではあまりアニメを観たことがなかったんですが、コロナ禍をきっかけにアニメを観まくったんです。

戸谷:へぇ、コロナ禍から!?

橘:その前は友達の影響で『銀魂』を観たりとか、『けいおん!』を観たりしたことはありました。私、『けいおん!』を観て軽音部に入ったんですよ。

日笠:え! ほんとに!?

戸谷:すごいっすね…!

橘:そうなんですよ。逆に自分が知ってるアニメってせいぜいそのくらいしかなくて。コロナ禍のステイホームでずっと家にいたから、アニメをたくさん見始めて、それで日本ナレーション演技研究所に入りました。

日笠:コロナ禍のときが高校生かぁ…。

戸谷:軽音部ではどのパートをやっていたんですか?

橘:ギターボーカルを担当していました。

戸谷:なるほど、ボーカルだったんだ! この作品のアフレコが始まったとき、クロエの登場シーンで「声デカッ!」って思ってたんだよね。ミキサーさんから「マイクからちょっと離れてください」って言われてるのを何回か見たことがあります。

日笠:単に声が大きいだけじゃなくて、思い切りがあっていいよね。

橘:ホントですか、嬉しい!

戸谷:クロエの演技を聞いていて、怒りの感情がすごく伝わってきたんだよね。その辺はどこで学んだの?

橘:私、ミュージカルが好きなんです。幼稚園児のころから、我が家では毎月ミュージカルを観に行く習慣があって、かれこれ15年くらいずっと舞台を観続けていました。

日笠:へぇー、すごい! ステキだね~!

戸谷:いいなぁ、羨ましい! ミュージカルなんて毎月だって行きたいもんなぁ。いつか自分もミュージカルをやりたいって気持ちはあるんですか?

橘:自分には向いてないなって思ってます…恥ずかしがり屋なので。お芝居をしている最中にお客さんに「観られているな」と意識した瞬間、ドキドキしちゃうんですよ。

日笠:ああ~、なるほどね。

橘:そうなんですよ。台本があると、台本と他の方のお芝居とでのめり込めるんですけど、ミュージカルみたいなオープンな場だと特有の環境に刺激されて、現実に戻ってきちゃうんです。もうちょっとお芝居に没頭することに慣れたら、いつか舞台上でお芝居ができるときも来るのかな、と思うんですけど…。

戸谷:いや、絶対できると思いますよ。その素養はあると思います。歌だって歌えるわけだから。

橘:ええ、なので今は、お芝居をめちゃくちゃ勉強しています。

日笠:う~ん、素晴らしい!

※一同拍手

 

終わりに

メインキャスト三人の、三者三様の個性によって命が吹き込まれる『転生ゴブリンだけど質問ある?』。アニメの続報は、今後の「となりのヤングジャンプ」ブログや、ヤングジャンプ本誌で随時公開! 秋の放送開始をお楽しみに!!

デビュー40周年記念 俵万智の歩み

main

第一歌集の『サラダ記念日』に始まり、2025年発売の『生きる言葉』まで話題作を発表し続ける俵万智さん。デビュー当時の思い出から近況まで余すところなく足跡を辿るスペシャルインタビュー!!ファンはもちろん、初めての読者も必読です!
取材・文/ヤングジャンプ編集部
撮影/松田嵩範 ヘアメイク/萩村千紗子

プロフィール

俵万智
1962年12月31日生まれ。歌人。1986年「八月の朝」で角川短歌賞を受賞。翌1987年に第一歌集『サラダ記念日』を発行。以降、2023年には第七歌集『アボカドの種』が刊行されるなど現在に至るまで歌を詠み続けている。その他、『あなたと読む恋の歌百首』『生きる言葉』など著書多数。

 

◆俵万智さんの原点

――短歌との出会いを教えてください。

俵 学校で習った短歌はやや古めかしくて、自分が作るのとは結びつかなかったんですね。大学生になって佐佐木(幸綱)先生の授業を受けて面白かったので先生の歌集を読んでみて、毎週話を聞いている先生の生きている姿がここにあるって感じがした。現代短歌はこんな風に表現手段としてもあるんだって思って、こういうのだったら作ってみたいと思ったのが最初です。

――佐佐木先生が40年以上続く短歌に出会うきっかけだったのですね。人生に影響を与えるような出会いを引き寄せるコツはありますか。

俵 出会いを大事にするのはすごく大きなことだと思いますね。早稲田の教室でも200人ぐらいの学生が佐佐木先生の授業を取ってるわけなんですけれども、その200人が全員先生に手紙を書いて短歌を作り始めているわけではないですよね。出会いっていうのは本当に偶然なんだけれども、それを偶然で終わらせるか自分にとっての必然に変えるかは自分次第かなっていうのは思ってますね。

――他の人がしていない中で先生に手紙を送る際に躊躇はあったのでしょうか。

俵 他の人がどうっていうのはあまり考えてなくて。ただ、好都合なことに私、先生に憧れるのが割と多いパターン。先生に憧れるのはおすすめなんですよ。なぜかというと先生は拒否できない。恋愛で言えば失恋する心配がない。先生は生徒を受け止めるっていう大前提がありますよね。先生も絶対嬉しいはずだしね、自分のジャンルのことに興味を持ってくれる次の世代がいるっていうことは。だから先生おすすめ。

――ありがとうございます。短歌を作ってみたいと思われてからは何をされたのでしょうか。

俵 その先生が主宰している「心の花」っていう短歌の会に入る勇気はなくて、どうしようかと思ってた時に雑誌の公募短歌館というコーナーに一首送ってみたら塚本邦雄さんっていう前衛短歌の巨匠が採ってくれたんです。それで勇気を得て「心の花」に入った。(公募短歌館に送ったのは)「手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛」。当時佐佐木先生に書きまくってたように手紙が好きだったので、手紙の歌でしたね。

――歌が高く評価されたことをきっかけに短歌にのめり込まれたのでしょうか。

俵 そうですね。自分の作ったものが活字になって嬉しいなっていうのもありましたし、 認められたことで背中を押されて本格的に勉強しようと思った感じはありますね。

――1987年刊行の『サラダ記念日』をはじめ、現在に至るまで短歌を発表され続けています。短歌の魅力はどのような点にあるのでしょうか。

俵 言葉が好きで、何か言葉で表現したいっていう気持ちはずっとあったんです。大学生になって文学サークルを見たんですけれど、そこにいる人は書きたいことがあってすごいなぁと圧倒されて、自分はまだ何もないなと思ってサークルに入れなかった。何を書きたいかも分からないしインプットする時期かと思ってたんですけど、短歌に出会ってからはそれこそ自分が好きだから手紙のことを書けば短歌ができる。なんでもないことが歌になるのが新鮮だったし、嬉しかったし、特別な経験をした人じゃなくても作れるのが短歌の素晴らしいところですね。

――『サラダ記念日』の巻末で、佐佐木先生は、口語かつ定型にはまっている点や失恋の歌なのに明るい点が新しいと言われていました。意図的に今までの短歌と違う作り方をされたのでしょうか。

俵 いや、そんな意図は特になく。自分にとっては自然であるのがすごく大事かなと思って、だから古い言葉を使うよりも自分が日常で使っている言葉の方が自分の日常を書くには使い勝手がいいなとか、口語の方がしっくりくるよねとか。失恋の歌も、私は悲しければ悲しいほどそれだけ悲しいと思えるような人に出会えた証かなって思ったりするんですよね。フラれて辛ければ辛いほどその恋愛には重みがあったことの裏返しだろうなって思って作ってるからあまり暗くならないのかもしれない。

――短歌は日常生活から作る方が多いのでしょうか。

俵 もちろんそうじゃない作り方の人もたくさんいるんですけれど。例えば中城ふみ子は『乳房喪失』という歌集で乳がんになった体験とか大変な恋愛沙汰とかをドラマチックに表現しました。寺山修司だったら歌の中で勝手にお母さん殺しちゃったりとか(笑)。色んなタイプの歌の作り方はあるんですけれど、私にとっては日常を受け止めてくれる形としての短歌が一番魅力的に思ったってことかな。

 

◆ライフステージに伴う短歌への影響。「サラダ記念日」誕生秘話も!?

――第四歌集『プーさんの鼻』以降ではお子さんの歌も詠まれています。お子さんが産まれる前後で歌に変化はありましたか。

俵 恋の歌はそのままじゃ人様に届けるものにならないので、盛り付けを工夫したり、ソースかけたり、お皿を変えたりしてやっと出せる感じがある。でも子育ての歌は刺身で出せる、むしろその方がいいっていうのは変わったかもしれないです。子育てって「あっ」という感動が上書きされていくんですよね。子供って月齢で数えるでしょ。それは1ヶ月前とは別の生き物になってるからなんです。その変化の速さを捉えないと感動を忘れちゃうんですよね。初めて立ったとか歩いたとかめっちゃ驚くけど、そのうちスタスタ走ってても追いかけるだけになっちゃうから。初めての時の驚きは生け捕りにしてどんどん歌にしていく方がよりリアルでビビットな歌になる。そういう意味では作り方は少し変わったと思います。

――子育てに関して、エッセイなどで遊びをさせてよかったと書かれています。勉強と遊びで学べるものはどのような違いがあると思われますか。

俵 違いというか、両輪だと思うんですよね。自然の中で、これなんだろうと思ったり不思議に思ったりすることを論理的に実感できるのが机の上の勉強。海から吹く風を浴びたことがある人が陸と海の温度の下がり方が違うから風が吹くんだっていうようなこと。海で遊んで風を感じたことのある子がそれを勉強するのと、理屈で勉強するのってちょっと違うと思うんですよね。その両方はすごく大事だと思う。ただ机の上の勉強は大人になってもいくらでもできるけど、自然の中で何かを感じるっていうのはなかなか大人になってからはできないから子供にはそっちをメインにさせてやりたいなと思いましたね。

――『未来のサイズ』ではセウォル号を題材にした歌を詠まれており、あとがきでは「子育てを通して、社会のありようへの関心を深めた」と書かれていました。お子さんが産まれてから社会への視線はどのように変化したのでしょうか。

俵 本当に自分に無関係のニュースとかなくなる。 申し訳ないけど、40歳まで都会の真ん中で自分で稼いで一人暮らししてる時は自立してると思ってたし、ぶっちゃけ地球あと50年持てばいいかなって。それぐらいのスパンでしか考えられなかったんですよ。子供が生まれると、その子供が将来大人になるまでの時間も考えるし、自分がそれを見届けられないから不安でもありますよね。子供にまた子供が生まれたとしたら、その先100年、200年ってどうなっていくのかってすごくリアルなこととして思われてくるので、新聞のニュースを見てても教育のことにしても、温暖化のことにしても、政治のことにしても、無関係と思うニュースがなくなりますよね。必然的に社会に対する関心っていうのは高まる。子供がいなくてもそれぐらい高めろよっていうことは自分に突っ込んでおきますけれども(笑)

――最近もニュースはご覧になっているのでしょうか。

俵 そうですね。関心を持つものが増えてきました。でも社会への関心を詠むのが難しいのは、ただなんとか反対とかって言うとスローガンとか新聞の見出しみたいになっちゃう。セウォル号の時は自分が高校の教員だったっていう強い思いがあったから詠めたかなと思うんですね。だからそうやって接点がきっちり見えるものを作品化していければと思います。

――話は変わりますが、「恋の歌はそのままじゃ人様に届けるものにならない」について詳しく教えてください。

俵 恋ってロマンチックだったり小道具も素敵だったりした方が気持ちが伝わるんですよね。サラダ記念日の歌(「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日)もサラダじゃなくて鶏の唐揚げだったんですけど、鶏の唐揚げじゃなんかなーと。ちょっとしたものが美味しかったから記念日って気持ちはあって、そのちょっとしたものを何にするかは変えられる。7月6日でもなかったわけですけど、サラダのSと響かせて7月6日。七夕のドンピシャじゃなくて前日なのは、恋人同士の記念日が七夕だと普通になっちゃう。なんでもない日を記念日と思ってるアホさ加減はドンピシャじゃない方が強調されるっていうことですよね。なんでもない日まで記念日にしちゃうのが恋の恐ろしい力。

――細部までこだわりが詰まっているのですね。作歌の際はテクニックも考えられているのでしょうか。

俵 考えてます、考えてます。そこは考えてる。短歌って言葉100%でできている表現ですからいかに言葉を魅力的に使うかとか、定型となじませるかとか、届く言葉に仕上げていくかはシビアに考えている。言葉がすごく好きですし、それが楽しいからだと思うんですけれども。

――「届く言葉に仕上げていく」について詳しく伺いたいのですが、詠みたいものと読者からの印象はどちらを優先してますか。

俵 どちらもだと思う。自分が詠みたくないものを人に読ませるのも失礼だし、人に読ませることばかり考えてもいいものにならないと思うんですよね。まず自分が詠みたいって思えないと。その上で人が読んで面白いものにする目も持つことは大事ですよね。

 

◆角川短歌賞受賞から40年の現在地。変わるものと変わらないものは。

――最新歌集『アボカドの種』では変化はありましたか。

俵 人生のいい部分を歌にしたいっていうのが基本的な考えだったんですけど、高齢の母のサポートをしてるとイライラしたり視野が狭くなったりしてしまって、『アボカドの種』になって初めて黒い歌も詠んでしまった。それを歌集にまとめる時は落とそうかなと。こんなものが届いても嬉しくないのではって思ったんですよ。でも編集の人から、俵さんでもこんな黒い歌を詠むと思ったら励まされます、むしろ残してほしいって言われて。例えば「切り札のように出される死のカード 私も一枚持っているけど」。(母は)「私はもう先がないから」とか切り札のように死ぬ死ぬ言うんだけれど、全員がいつかは死ぬわけで、その切り札私も持ってるなと心の中で思ってしまった時の歌です。それを言語化してもらえて嬉しいっていう感想はありました。そういう歌にも人は励まされるし共感もするっていうことは、やっと気づいた感じがあります。黒いことを考えてしまった時に、はっとしたり、ちょっと落ち込んだりっていうことはみんなあると思うんですよね。

――『サラダ記念日』から40周年を迎えて、その時でなければ詠めなかったと感じる歌はありますか。

俵 10代20代の感覚は詠んどいてよかった。「なんでもない会話 なんでもない笑顔 なんでもないからふるさとが好き」とか。初めてふるさとを離れた10代20代じゃないと持てない感覚ですよね。あとは「思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花」とか。こんな手放しな歌、今はちょっと恥ずかしくて詠めないかなとか思ったりします。この前10代20代の人を相手に授業をする番組を撮った時、10代20代の人はサラダ記念日を読んで分かるのかなと思ったんですよ。で、読んでもらったら「母の住む国から降ってくる雪のような淋しさ 東京にいる」とかに共感したっていう意見が多くて。そういう歌は時代とは関係なく世代なんだなと思ったんですよね。

――変化する部分がある一方で、一貫して恋の歌を詠まれてもいます。俵さんにとっての「恋」とはどのようなものでしょうか。

俵 2人として同じ人はいないし、自分とその人が出会うことで化学反応が起きるのが恋愛だと思うんですよね。それは自分自身を変えることになるし、時間が豊かになる感覚はあるな。恋は落とし穴に落ちるように落ちてしまうので、もうそれを楽しんだほうがいいよって思います。ただの好きと恋とどう違うかっていうと、ただの好きは理由が挙げられるんですよ。話してて面白いとか顔がタイプとか理由が分かるんですけど、恋はなぜ惹かれてるか分からない。むしろ嫌なところがあるのになぜか惹かれるっていうのが恋だと思うんです。あとはデートに誘われた時に河原でおにぎりでもいいかなって思える人と行きます。店によって断ったり断らなかったりっていう人はまだ恋ではないですね。

――恋は落ちるものとのことですが、それを歌にする際は先ほど仰っていたように小道具を工夫されるなど客観視されている印象がありました。創作のうえで感情を描きつつ、そこから距離をとるためのコツはありますか。

俵 歌を作るというのは一旦落ち着こうかっていう感じはありますよね。この状況とか、自分がどういうことにウキウキしてるかとか、相手のどういうところにドキッとしたかっていうのを客観的に見る目を持つ時間はもたらしてくれると思いますね。

――短歌にしようとすることで距離を取れるということでしょうか。

俵 (短歌を作ることと距離をとることの)どっちが先かは分からないけど、夢中で楽しい時は歌なんか作ってられないわっていう感じもあるかもしれないし、何か不穏なことがあったりとか、自分でもあれって思ったりする時、その隙間みたいなものを埋めるように言葉が入ってくる感じもあるかもしれないですね。

――2025年に出された『生きる言葉』の中で短歌に留まらずAIやラップなど多岐にわたるお話をされていました。最近新たに興味を持たれた分野はありますか。

俵 ボディービルの言葉は面白かった。甥っ子が学生でボディービルをやってて、大会の応援に行ったら掛け声が素晴らしいんですよ。みんな創意工夫しまくってて「腹筋が板チョコ」とか「肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい」とか。ボディービルの掛け声辞典があって買っちゃったんですけど、なんでそれほど感動したかっていうと、褒めて褒めて褒めまくる。とにかくみんな褒めまくる。それが壇上にいる学生さんを励ますっていう。全肯定を浴びせているんですよね。言葉で鼓舞するっていうかな。誹謗中傷とは真逆の、これこそ言葉の本来の使い方ではないだろうかと思って、素晴らしかったですね。思いがけない拾い物をしたな。

――最後に、今振り返って俵様が短歌で生計を立て続けるほどの成果を出すことができたのはなぜか教えてください。

俵 運が良かった。本当にそうだね、運が良かったとしか。最初の歌集(『サラダ記念日』)がすごくたくさんの人に読んでもらえて、歌人として認知してもらった。で、歌人という肩書きでエッセイを書いたり選をしたり。でも今も短歌の原稿料とか歌集の印税で食べてるわけではないっていうことは割とシビアにあります。逆にそれは短歌のいいところで、短歌は幸か不幸か原稿料では食べていけないので、むしろ作品に関してはとことん自分の好きなようにはできる。だから短歌は職業とか趣味とかでもなく、自分が生きていることと並行してあるっていう感じですね。別に誰に頼まれることもなく作って、作りたいものを作るっていう一番自由な領域かもしれないですね。


春ヒコ、ヤンジャン熱愛報道中。

main

今回は、お笑いコンビ「春とヒコーキ」のお二人にインタビューを実施した。
YouTubeチャンネル「バキ童チャンネル」は登録者数200万人を突破。
直近では単独ライブ「モンキービジネス」を開催するなど、まさに今、お笑い界の最前線を走り続ける存在だ。
そんなお二人は、筋金入りの漫画好きとしても知られている。
今回は「ヤングジャンプ」を軸に、漫画論から芸人論まで、たっぷりと語ってもらった。
(取材・文/ヤングジャンプ編集部 撮影◎松田嵩範)

 

tonarinoyj

 

<ヤングジャンプ=ジャンプのエッチ版だと思っていた>

――早速ですが、ヤングジャンプの作品の中で好きなタイトルはありますか?

ぐんぴぃ いやー、むちゃくちゃありますね。どうしよう。

――本当ですか。

ぐんぴぃ …選べないです!

――すばらしいです、ありがとうございます。

ぐんぴぃ うん、いっぱい立ち読みしてきましたからね。

土岡 立ち読みかい。

――(笑)

ぐんぴぃ ベタで言うと『キングダム』『リアル』。あと『B型H系』ですね。俺、『B型H系』からヤンジャンに入ったんですよ。

土岡 よく言ってるよね。

ぐんぴぃ 当時、ヤンジャンのことを「ジャンプのエッチ版」だと思ってたんです。「ヤング」ってエッチって意味らしいぜ、みたいな。

土岡 いやいや、普通に「若い」って意味だからね。

ぐんぴぃ そう言われて「本当?」って思って。で、パッとヤンジャンを開いたら『B型H系』が載ってる。「おいおい、やっぱりエッチじゃねぇか」って。 山田っていう女の子が、とにかくエッチしたいんだけど、空回りして全然できないっていう話で。四コマで読みやすいのも嬉しかったですね。

――雑誌の入り口としては、かなり強烈ですね。

ぐんぴぃ あの作品が「バキ童チャンネル」の原点ですよ。『B型H系』みたいなエッチをやりたい、ってことで「バキ童チャンネル」をやってますから。

――(笑)

土岡 僕が「支えられた」という意味で好きなのは 『干物妹!うまるちゃん』(以下『うまるちゃん』)ですね。 うまるちゃんのアニメを観るのがライフワークでした。 うまるちゃんって、とにかくだらしないキャラクターじゃないですか。 家ではずっとだらけてるし、お兄ちゃんからもめちゃくちゃ怒られる。 普通の人なら反面教師にしそうですけど、 僕は「なるほど」って思ったんですよ。 要は、ポテチとコーラを買ってきて、 時間を無駄にすればいいんだな、って。 贅沢の仕方を教えてもらった感じでした。

――人生の教科書にしていたわけですね。

ぐんぴぃ 『うまるちゃん』がヤンジャンにある、っていうのがいいんですよね。 あれが四コマ専門誌とか、いわゆる萌え系の雑誌にあったら、 正直ちょっと身構えちゃうと思うんです。

――ヤンジャンらしくないから読みやすいと。

ぐんぴぃ 当時のヤンジャンって、ページをめくれば 春秋戦国時代の中国で人が死んでるし、 別のページでは喰種が人間を襲ってる。 その中に『うまるちゃん』がいる。 そのバランスが、ちょうどいい。

土岡 雑誌全体として、ってことか。

ぐんぴぃ 『エルフェンリート』の岡本倫先生なんて、 もうヤンジャンを体現した作家だと思うんですよ。 エッチでフワフワした空気かと思ったら、 突然、人体切断が起きる。 普通にトラウマですよ。

――油断しているところに来ますよね。

ぐんぴぃ そういう意味で、ヤンジャンには本当に大人にしてもらいました。 エロスもあるし、子どもにはちょっと怖い物語もある。 それに、少年誌的な「夢のある勝ち方」じゃなくて、 もっと生々しい勝ち方を教えてくれた。

土岡 綺麗じゃない勝ち方。

ぐんぴぃ 『キングダム』なんて、 努力・友情・勝利じゃなくて、 「討った敵全員の目をくり抜きました」みたいな。

土岡 相手の感情を乱す戦い方だよね。

ぐんぴぃ 乱して、崩して、倒す。 「ええ?」ってなるけど、 あれは忘れられない。 ヤンジャン、楽しい。

 

tonarinoyj

 

<ビジュアル、ギャップ、そして”生き方”に魅力あり>

――続いて、ヤングジャンプのキャラクターの中で、 特に思い入れが強いキャラクターがいれば教えてください。 また、どんなところに惹かれているのかも含めて伺えればと思います。

ぐんぴぃ やっぱり『GANTZ』の多恵ちゃんですね。 『GANTZ』の多恵ちゃんが一番いい。本当に健気なんですよ。 見た目は地味な女の子ですから、主人公の玄野は最初、 ちょっと罰ゲームみたいな感覚で付き合い始めるんですけど、 だんだん可愛くなっていく。

土岡 そこから、『GANTZ』のあの世界に巻き込まれていく。

ぐんぴぃ 宇宙船に連れて行かれて、 訳の分からない世界に放り込まれて。 それでも玄野のことを信じて、一緒にいようとする。 あのリアリティは、本当に胸に来ましたね。

土岡 『GANTZ』で言うと、僕は田中星人が好きですね。 映画での印象が強いんですけど、とにかく怖かった。 意味も分からず追いかけてくる感じが、 子どもの頃に見た悪夢、 全部こいつだったんじゃないかと思うくらい。

――ビジュアルだけでも伝わってくる恐怖感があります。

ぐんぴぃ 確かに、あれは怖かったですね。

土岡 あと、僕が好きなのは 『かぐや様は告らせたい』の石上ですね。 最初は、斜に構えてリア充を見下してるキャラだと思うんですけど、 過去が明かされると、全然見え方が変わってくる。 好きな女の子を守るために、 自分が悪者になる選択をする。 その結果、ずっと嫌われたままなんだけど、 それでもいいって背負ってるのが、めちゃくちゃ格好いい。 コメディ作品なのに、 あんなエピソードをぶち込んでくるんだ、って驚きました。

ぐんぴぃ 赤坂先生は天才ですよ。

土岡 藤原書記も、キャラクターとしては大好きですけどね。

――方向性の違う「好き」な気もしますが。

ぐんぴぃ かわいいよね。

土岡 特にアニメのエンディングで藤原書記がダンスする回。 あの回は何回も見ました。

ぐんぴぃ 『かぐや様』は、 ギャグもシリアスも、 全部ちゃんとキャラクターの魅力で成立してるのがすごい。 あと『キングダム』で言えば、 嫪毐とか、桓騎とかも好きですね。 桓騎は、ずっと好きでした。 頭が良くて、奇策ばっかり使うけど、 結局「基礎がない」っていう弱点があって負ける。 それがめちゃくちゃ示唆的で。 当時の自分は、 トリックスターな桓騎に憧れてたけど、 やっぱり基礎だな、って思わされました。

 

<芸人目線で見る掛け合いの妙!?>

――さて、ヤングジャンプ作品について たくさん語っていただきましたが、 ここからは漫画の中で 「このセリフ回し、掛け合いはすごい」と感じたシーンを 教えてください。

ぐんぴぃ 『東京喰種』の金木くんの 「この世のすべての不利益は当人の能力不足」 というセリフですね。 闇堕ちしたときに言う言葉なんですけど。

土岡 刺さるよね。

ぐんぴぃ 刺さるんですよね。 まあ、思考停止ではあるんですけど(笑)。 失敗には本当はいろんな原因があるんだけど、 それを全部自分のせいだと思い込むことで、 がむしゃらに進める。 一時期、かなり支えになってました。

――言葉としては危ういのに、 推進力にもなる。だからこそ読者に残るんでしょうね。

ぐんぴぃ キャラクター同士の会話で言えば、 やっぱり『かぐや様は告らせたい』になるのかな。 あと、『【推しの子】』もすごく良かったです。

土岡 『かぐや様』は、 主人公二人が出し抜き合おうとすればするほど、 どんどん二人ともバカになっていく感じが面白いんですよね。 お互い「相手の上に立とう、立とう」と 掛け合いをしてるのに、 読者から見ると、 両方ともどんどん下がっていく。

ぐんぴぃ どっちもボケなのに成立してる。 あの脚本力は本当にすごいですよね。 『【推しの子】』で言うと、 アクアと有馬かなの掛け合いも、すごく好きでした。

土岡 ルビーがジュースを飲んで 「まずいから悪口を書こう」って言ったときに、 有馬かなが 「商品について何か言ったら、 関係者5人は見るから」って止めるところ。 あれ、地味だけどすごいなって思いました。

ぐんぴぃ ちゃんと教えてくれるよね。

土岡 僕らも感想を軽く言っちゃうけど、 関係者が見てる可能性って、 確かにあるんだなって。

 

<『GANTZ』によって壊された中学生>

――では続いての質問です。 YouTubeチャンネルで、 漫画に関する企画を多く発信されていますよね。 その際に、何か心がけていることはありますか?

ぐんぴぃ 基本的には、 「この漫画、俺しか読んでねえだろ」 みたいなのを、 皆にも読んでもらいたいって気持ちが強いですね。 売れてる漫画だったら、 その中でもめちゃくちゃマニアックなシーンとか、 「これ俺しか覚えてないだろ」 みたいなところを話したくなる。

土岡 『ONE PIECE』のツメゲリ部隊みたいな。

――ツメゲリ部隊。 動画一本、撮られてましたよね。

土岡 やりましたね。 ツメゲリ部隊を真剣に考察する、みたいな。

ぐんぴぃ そうですね。ツメゲリ部隊。 みんな忘れてるだけで、 あんなすごい人たち、いないぞっていう。 ヤンジャン作品とかは特に、 「これ、俺しか見てないんじゃないか」 って思う瞬間があるんですよ。 色んなジャンルの作品があるからですかね。 まだ読んでいない人に作品をコマ単位で紹介して、 このコマがすごいんだ、 味わってほしいんだ、みたいな。 そこまでマニアックでも、 「そこがいいんだよな」 って言ってくれる人が、 コメント欄に一人は必ずいる。 それが、すごくうれしいんですよね。 『GANTZ』の3巻とかも、 マニアックですけど良いんですよね。 エッチなんです。エッチばっかりで申し訳ないんですけど。

――(笑)

ぐんぴぃ 僕ね、中学生のときに『GANTZ』を読んで、 それまで、めちゃくちゃおとなしい子だったんですよ。 声も小さいし、人見知りで、 下ネタも言えなかった。 でも『GANTZ』を読んだら、 エロもグロもナンセンスも、 全部やりたい放題で。 「こんな漫画が人気なら、 おとなしく優等生でいるの、 バカらしいな」って思って。 全巻読んだ翌日から、 クラスで奇声を発するようになりました。

土岡 無理やり、こじ開けられて。

ぐんぴぃ 『GANTZ』に、 人生を壊されたんです(笑)。 多恵ちゃんのシーンとか、 脳を焼かれましたね。 『GANTZ』みたいに、 むちゃくちゃであっても、 人に好かれるんだ、 って教えてもらった。 爆笑問題の太田さんが、 何にも感動できなくて塞ぎ込んでいた時期にピカソの絵を見て救われた、 って話がありますけど、 構造は同じなんですよ。 ただ、ピカソのほうが上品ですね。

土岡 ぐんぴぃの場合は結果が、 「奇声を上げる」になった。

ぐんぴぃ 全部、 『GANTZ』から始まってる。

土岡 僕はどちらかというと、 『かぐや様』とか『うまるちゃん』のような作品に 救われた、って話をしたくなりますね。

――同じ漫画の話なのに、 救われ方が真逆で面白いです。

土岡 主人公の男の子とのやり取りを見てるうちに、 いつの間にか 「この女の子が僕に こうしてくれた」 みたいな気持ちになる。 だから、漫画を紹介するというより、 「この女の子が、 僕にこんなことを言ってくれたんです」 って話してしまう。

――実体験として語られるわけですね。

 

<バキ童チャンネルは『ゴールデンカムイ』である>

――お二人は今度、 単独ライブを控えていらっしゃいますよね。 ネタや掛け合いの構成を考えるとき、 特に意識しているポイントや、 大事にしていることは何でしょうか。 以前ネタを拝見して、 いろんなキャラクターに扮されていたり、 歯医者さんなど、 特殊な場面設定が多い印象を受けました。 その発想は、 どこから来ているのでしょうか。

ぐんぴぃ これは、 土岡がやってますね。

土岡 何でしょうね……。 でも、欲望ですかね。

――欲望。

土岡 現実世界ではやっちゃいけないかもしれないけど、 「こういうこと言ってしまいたいな」 「やってしまいたいかもな」 っていう欲望を、キャラクターに乗っけて言わせる、 みたいな感覚です。 だから、日常の繊細な“あるある”から広げる、 みたいなのは全然できなくて。 欲望から入って、 ちょっと漫画とか映画の悪役みたいになれたらいいな、 と思いながらボケを作ってます。

ぐんぴぃ 悪役ね。確かに。 でも、土岡って 「罰したい」みたいな気持ちもあるよね。

――罰したい、とは?

ぐんぴぃ 土岡って、 大学卒業してからニート期間が 結構長いんですよ。

土岡 そうですね。 ずっと親の金で暮らしてました。

ぐんぴぃ 一回もバイトしたことないやつなんですけど(笑)。 でもコントでは、 僕がニート役で、 土岡が 「そんなくだらねえことしてないで 仕事しろや」 って怒るネタが来るんですよ。 あれ、どういうセラピーなんだろうって。

土岡 セラピー(笑)。 ミニチュアで街を作って心を癒すみたいな。

ぐんぴぃ 俺のほうを自分に見立てて、 「おかしいだろ」って言って笑いを取る。 いや、ニートはお前だろ、って。

土岡 でも、しょうがないじゃないですか。 ぐんぴぃのほうが、 その役が似合うなら。

ぐんぴぃ すごい嫌ですね。

土岡 だから、 僕らのコントって、 常に「欲望」と「常識」が ぶつかり合う構造なんですよね。

 

tonarinoyj

 

――ボケとツッコミというより、 「欲望」と「常識」の衝突だと。

ぐんぴぃ そう。 僕はニートだけど、 常識側ではいたいんですよ。 「自分は間違ってない」って思いたい。 そのためのセラピーというか。

土岡 ぶつけ合うことで、 自分の中で整理する。

ぐんぴぃ そうそう。 悪役がいることでね。

土岡 やっぱり、 悪役で説得力のあるキャラクターって、 漫画にもたくさんいるじゃないですか。 そこが、格好いいなって思うんです。 でも、漫画でも主人公って、 結構損してるなって思うんですよ。 悪役は、 やりたい放題やって人気が出て、 様になるけど、 主人公はずっと正攻法で 立ち向かわなきゃいけない。 例えば、『ゴールデンカムイ』なんて特にそうで。 鶴見中尉をはじめ、 次々と変態が出てくるじゃないですか。 自分の欲望を 「俺はこういう衝動を抱えて 生きたいんだ」 って、全力で表現してくる。 でも、 なんでその表し方なんだよ、 みたいな。 裸でいたり、 動物とセックスしたり(笑)。 そういう変態たちが 次々に出てくるのを、 主人公側は、 ちゃんと処理していかなきゃいけない。

――エピソードごとに、 その繰り返しですよね。

土岡 そう。 終わっても、また次が来る。 ずっと一定の枠の中で 戦い続けなきゃいけない。 それが、 ボケとツッコミの関係に、 ちょっと似てる気がするんです。

――なるほど。 「処理し続ける側」の宿命が 似ていると。

ぐんぴぃ 僕、『ゴールデンカムイ』が、 あれだけ世に受けたのは、 結構びっくりしたんですよ。 普通、少年誌だと、 一本のストーリーがあって、 そこに仲間が集まって…… みたいな構造が多いじゃないですか。 でも『ゴールデンカムイ』って、 あるときはグルメ漫画、 あるときはギャグ、 あるときはストーリー、 あるときはクライムサスペンス。 ジャンルが、とにかく総力戦。 何でもいいから、 面白いものを手に持って殴る、 みたいな感じ。 正直、最初は 「この漫画、何?」 って思いました。

――最初は戸惑うのに、 気づいたら虜にされているような作品ですよね。

ぐんぴぃ それで、 「バキ童チャンネル」も、 ジャンル関係なく、 『ゴールデンカムイ』みたいに やってみよう、って 本気で思ったんです。 飯の動画も上げるし、 エロい動画も出すし、 教養っぽい話もする。 一回、 全部無視して 暴れてみよう、と。 でも、全体に 「どうしようもなさ」が たゆたっていれば、 通底していれば、 何でも見られるんだなって。 ふざけてるけど、 本気の回もある。 感動回も、ちゃんとある。

――ジャンルは散らかっているのに、 信念は一貫している。 そこが強さなんですね。

 

<コンビを組むなら「森田」と「白石」が良い>

――最後に、 ヤングジャンプのキャラクターと コンビを組めるとしたら、 誰と、どんなコントや漫才を やってみたいですか。

ぐんぴぃ 俺は、 『スナックバス江』の明美かもしれない。

――確かに明美さんは、 トーク力の高さで 何をやらせても 爆笑を取れそうな感じがあります。

ぐんぴぃ で、 あとは森田。 『スナックバス江』の森田と 組みたい。

土岡 ぐんぴぃが?

ぐんぴぃ 組んで、 ダイタクさんみたいな 漫才をやりたい。 双子漫才というか、 同じようなやつが 二人いる、 っていうのを 見てほしいんだよね。

土岡 僕は、 『ゴールデンカムイ』の白石かな。 めっちゃ売れそうな 芸人の空気が あるんですよね。 先輩にも気に入られて、 いじられる感じもあるし。

――確かに。 あの「可愛がられ力」は 芸人界でも 武器になりそうです。

土岡 あと、 体がめちゃくちゃ 柔らかいじゃないですか。 体を無茶苦茶にする シーンも多いし、 物理的に無理な体勢とかも できそう。

ぐんぴぃ ビックスモールン みたいなことを やりたいんですか。

土岡 そうだね。 体で笑いを取りたい。

――いいですね。 漫画キャラと芸人の相性を、 ここまで具体的に語れるのは さすがです。

ぐんぴぃ 最近は、 男女コンビで、 後々くっ付くようなやつも 増えてきてますからね。 そういう方向を 狙っていくのも、 ありなのかも。

土岡 なるほど。

ぐんぴぃ 『かぐや様』の伊井野ミコちゃんとか狙っていきたいです。

――最後まで、選択肢が尽きないですね(笑)。

 

tonarinoyj

 

 

 

『銀色の路』完結記念! 安彦良和×原泰久 超絶画力対談

main

安彦良和先生の最新作『銀色の路―半田銀山異聞―』完結を記念して、『キングダム』の原泰久先生との対談をお届けします! 実は、安彦先生と原先生が対談するのは三度目。かねてより立場や年齢を超えて尊敬しあう二人に、「合戦ものの魅力」、「史実と創作の関係」、「今後のビジョン」等を縦横無尽に語り尽くしていただきました。超レアな安彦先生の仕事場探訪も!
※こちらの対談は2025年夏に収録いたしました。

司会・文/ヤングジャンプ編集部
撮影◎市川秀明

 

tonarinoyj

 

プロフィール

安彦良和(やすひこ よしかず):
1947年北海道生まれ。虫プロに入社。その後、フリーランスとなって『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターをはじめ数々のヒット作に携わる。漫画家に転身してから『王道の狗』など歴史を題材とした作品を多く発表し、最新作『銀色の路-半田銀山異聞-』が今号のYJをもって完結。

原泰久(はら やすひさ):
1975年佐賀県生まれ。2003年、週刊ヤングジャンプの月例新人賞にて『覇と仙』が奨励賞を受賞。2006年、週刊ヤングジャンプにて『キングダム』の連載を開始。同作にて、第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。2023年には累計発行部数が1億部を突破。現在は1億2000万部を超える。

 

【アナログへのこだわり】

原 お忙しいところ、本日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。

安彦 とんでもない。原さんこそ、お忙しいのに。今日は福岡から来られたんですか。

原 はい、先ほど飛行機で。

安彦 遠路はるばるありがとうございます。一旦ここでお話しして、後で仕事場をお見せする形で良いですかね。

――はい、もちろんです。

安彦 記憶が曖昧ですが、原さんの仕事部屋を以前テレビ番組で見ましたよ。あまりにも綺麗な部屋でホテルかと思いました。

原 今の新しい仕事場でしょうか。『キングダム』の連載開始当初は、狭いファミリーマンションだったんです。ただ、連載が続きスタッフを増やさないといけなくなるにつれ、広くなっていきました。(原先生が『キングダム』連載開始前にアシスタントをした) 井上雄彦先生の仕事場が凄かったので、それが理想になっているというのもあります。

安彦 なんて言っても井上さんだもんね。原さんのところは、すぐ見えるところにアシスタントがいるの?

原 はい、近くに最大で8人います。

安彦 8人! それは凄いね。僕は筆でやっているから、アシスタントを雇えないんですよ。

原 難しいところですね。

安彦 原さんのところはアナログですよね。今もフルアナログですか。

原 フルアナログですね。なので、アシスタントにもアナログで描いてもらっています。

安彦 今回『キングダム』を読み返して、もしかしたらフルアナログかなと思いましたが、本当にとは…。何のペンを使って描いているんですか。

原 Gペンと丸ペンを使っていますが、どちらかと言うと丸ペンが多いかもですね。最近は細かいところはミリペンもちょっと使うようになりました。

安彦 やっぱりアナログにこだわりがあるんですか。

原 はい。アナログの方がほぼいない今だからこそ、余計こだわったほうがいいなと最近思ってきています。

安彦 アナログはもう絶滅危惧種ですよね。でも、アナログいいですよね。手先仕事の巧さも拙さもそのまま出る。そして、なによりも原稿が残る。ナマの原稿が残ると「原画展」が出来る(笑)。

tonarinoyj

 

【才能が輩出される職場】

安彦 最近知って面白かったのは、水木しげるさんがアシスタントを物凄く巧みに使われていたことです。てっきり一人で黙々と作業する方だと思っていたけど、真逆で人使いに長けた方だったらしい。実際、つげ義春さんや池上遼一さんら有名漫画家が輩出されています。

原 そうなんですか、知らなかった。

安彦 ええ。人使いが上手くて、色々な才能を自分のところから輩出する。それはやっぱり人望ですよね。

――それで言うと、原先生の職場からも沢山の漫画家が輩出されています。

安彦 それは、やっぱり原さんの人望ですよ。「こいつデビューさせたいな」とやっぱり思いますか。

原 基本的に、僕はみんなに対してデビューさせたいと思っています。「うちは就職の場ではなく、デビューするための修業の場だ」と常に言っているので。

安彦 デビューする弟子が沢山いらっしゃるということは、しっかり技を身につけているわけですね。

原 そうですね。あと、(アシスタントが描いた)ネームを僕が見てアドバイスをすることもあるので、話作りの方も見ています。

安彦 良い先生だ。アシスタントの中で割り振りとかは決めているんですか?背景専門の人みたいな。

原 いえ、なるべくみんな一緒のことをやってもらっています。というのも、一つに特化するより、全部できるようにした方がプロになりやすいと思っていて。井上先生の職場がそのシステムだったので、それを継いでいるんですけど。

安彦 にしても、本当によくここまで背景を描き込めるなと思います。

原 あれでも抑えているんです。うまくなってくるとみんな描き込み過ぎるんですよ。なので、その時は「背景じゃなくてキャラクターがメインだから、そこまで主張しないで」といったことを指示します。

安彦 あれでも抑えていたんだ。それは聞かないと分からなかったな。あと、原さんは相当自分で描く方でしょう。

原 はい、基本ずっと描いています。特にキャラクターは僕が全部描いています。甲冑や豆粒くらいちっちゃい人物はアシスタントに描いてもらいますけど。表情が少しでもある人物は自分で描きます。

安彦 目だけとかじゃなくて。

原 はい、全部描いています。

安彦 けど、アシスタントから「このキャラ描きてぇ」って雰囲気とか結構感じるでしょう。

原 やっぱり上手いアシスタントは、手とかを描き出すことがたまにあります。けど、手にも表情が出るじゃないですか。形であったり力具合だったりで。やっぱり他人が描くと違うんですよね。結局、描いてきても、僕が消して描き直すというのを繰り返しています。

安彦 渡さない先生ですか(笑)。

原 なので時間がかかるんです。結局アシスタントが増えても、僕が描く量は変わらないので。

tonarinoyj



【作った物語を100%伝えたい】

 

安彦 けどそれだけ自分で描かれているというのは、根っから描くのが好きなんでしょう。

原 僕は絵を描くのが好きというよりも、物語を考えるのが本当に好きなんですよね。だから、作った物語を100%伝えたいということで、自分で描いています。描くのは正直つらいです。ずーっと描いていますから。

安彦 ネームや下書きを描いて、ほぼ出来ているからいいやとは思わないですか。

原 どうしても気になっちゃいますね。結局、全ての人物を描いちゃう。

安彦 それはやっぱり好きなんですよ、愛情が深いんです。

原 愛情は深いかもしれない。

安彦 僕はそういう人、好きですね。浦沢直樹さんと『漫勉』の収録で喋ったときに面白いと思ったのは、浦沢さんも自分で描く方なんですよね。さすがに、ベタとかはアシスタントに任せるんだけど、アシスタントに渡すのが「悔しい」って言うんですよ。

原 そうですか。

安彦 本当は渡したくない、自分で塗りたいんだって。キャラを描くのとは違うかもしれないけど、「浦沢さんはやっぱり描くのが好きなんだな」と思った。原さんも、自分でキャラを全て描くというのは、結局描くのが好きなんですよ。僕はそういう人が凄く好きですね。

 

【安彦先生が『史記』を読んでみたら…】

 

安彦 今回対談にあたって、『キングダム 完全版』*1を読みました。これ、全話に(原先生自身による)解説が付いていて凄いね。解説を読んで、なるほどと思うことが沢山ありました。そもそも、『キングダム』は大ヒット作品だから、成功物語だと思っていたのに、アンケートの厳しい時期が続いたんですね。

原 そうです。序盤は本当に打切り候補だったので。

安彦 初め厳しかったというのは以前聞いていたのですが、序盤の数話程度だと思っていたんです。けど、これを読むと一年以上は低空飛行だったんですね。

原 一年間、本当に危なかったです。

安彦 解説を読んで、「これがプロ意識だな」って思いました。「こういう風にやってみた」、「こういう風に変えてみよう」って人気を出すために毎回工夫されていますよね。

原 僕はめちゃくちゃ考えて描いていますね。

安彦 やっぱり売れる人は違う。

原 そうするしかなかったというのが正しいんですけど…。プロの世界に入ると、絵が上手い方は山ほどいるので、どこで勝負するんだってなると「もう考えるしかない」って。「誰よりも考えて描こう」というのは最初から思っていました。

安彦 工夫の軌跡を知り、本当に頭が下がりました。あと、今回の対談に向けて準備していたら、『史記』が家にあったんですよ。ただ、本棚の奥に突っ込んだまんまで、ほとんど開いてすらいなかったんですが。

原 そうですか。

安彦 ええ。お話するにあたって『史記』も読んでみたんです。『史記』の全体から見ると、始皇帝の部分の記述って意外とないんですね。

原 そうです、全然ないです。

安彦 「えっ?」と思うぐらいないですよね。

原 はい。『史記』には、点しか書かれていないですからね。「ここで勝った、誰が死んだ」というぐらい。

安彦 ね。李信だってほとんど…。

原 出てこないです。

安彦 出てこないですよね。それでも、『史記』の中からあの部分を描こうと思ったのはなぜですか。

原 李信が情報として載っているのは、若くして大将軍になったということと、攻めるときに大失敗したということ。けど、失敗した後に殺されていないんです。始皇帝ってひどい人というイメージだったのですが、李信は斬首になってない。それを知って、僕は李信と嬴政(始皇帝)の間には友情のようなものがあったのかなと読み解きました。李信は若い将軍で、嬴政も若いので。それで、彼らをメインにして物語を作れるのではないかと考えました。

安彦 なるほど。てっきり、原典があるのだと思っていたんです。そしたら『史記』には何も書かれていなかった(笑)。

原 あとは、自由に合戦ものを描きたかったんですよね。日本の歴史だとある程度知られているので、自由にドラマを作ろうとしても嘘っぱちと言われてしまう。それで悩んでいる時『史記』に出会ったんです。春秋戦国時代については多くの人は知らないし、武将も知られていない。ただ、名前はちゃんと書かれているので、じゃあ春秋戦国時代を舞台にして自由にやろうと思ったんです。

安彦 そういう経緯があったんですね。

tonarinoyj

 

【合戦ものの魅力】

 

原 でも、合戦ものをやりたいと思った理由を考えると、子供の頃に安彦先生が監督した劇場版『アリオン』(1986)を映画館で観たのがきっかけなんです。そこで古代スペクタクルに触れて、すごく印象的でした。河了貂の「男の子に化けているフリをしている女の子」という設定は、(『アリオン』に登場した)セネカがベースだなと今になって思ったりします。『アリオン』には本当に衝撃を受けたし、影響もだいぶ受けていると思います。

安彦 あれも、ギリシア神話を参照はしているけど、ほとんど創作なんですよね。アリオン自身も僕の勝手な解釈で。

原 なるほど。

安彦 呉茂一さんの『ギリシア神話』を読んだときに、結構いろんな説があるって書いてあったんです。色んな説があるなら創作もあっていいだろうと、開き直っちゃったんです。

原 僕は『アリオン』のパンフレットを買ってずっと眺めていました。小学生ぐらいだったので、ギリシア神話の名前も有名なところしか分からない。だから逆に人物相関図を見ながら「これとこれが兄弟なんだ」とか考えるのが楽しくて。そして、そこからまた観直すのもさらに楽しかったんです。
 その経験があって、『キングダム』を考えた時も、うまくいけば何も知らない人でもちょっとずつ覚えていって、何度も読み返してもらえるんじゃないかと思ったんですよね。

――ある意味で、『キングダム』の合戦ものとしての側面は安彦先生に原点があるのですね。

原 合戦ものって、他ではほとんどないんじゃないですかね。時代劇はありますが、合戦ものはやっぱりコストが高くかかるので。

安彦 大河ドラマとかになるよね。ただ、テレビの大作合戦ものとかを観ると、エキストラの使い方が勿体ないって思う。合戦シーンでエキストラが隊列組んで行くときに、群衆のケツまで見せちゃうんですよね。すると、「エキストラがここまでなんだ」ってはっきり分かっちゃう。対照的に、黒澤明はその辺上手いですよね。いかにもいっぱいいるように見せる。

原 分かります。僕は「モブは必ず端まで描け」って言います。見切れるところまで描かないと多く見えないからって。普通途中でやめちゃうんですよね。

安彦 しかも、『キングダム』の場合は俯瞰で描きますよね。これは描くのは本当に大変だろうなって。

原 漫画のいいところは、描けばいいので(笑)。描けば良いのだから、こっちの勝ちだと思っていっぱい描くんです。

安彦 そうなんだけど(笑)。さらに、週刊雑誌だから時間をかけて描くこともできないでしょう。

原 そうですね。大きいコマでも一、二日で絶対終わらせないと間に合わないですね。

安彦 本当に凄いね。

原 安彦先生は合戦ものの映画とかは幼少期に観ましたか。

安彦 僕の時代は、そもそも映画を簡単に観ることのできる環境じゃなかったので、ほとんど観ていないです。

原 僕は片っ端から観るようにしていました。子供の頃、ハリウッドが合戦ものの映画をやり出していたので、一個も見逃さないように。

安彦 観ればうきうきして喜んだと思うんだけど、とにかく映画館に行くこと自体が僕の時代は稀だったから。ほとんど接してないんです。そんな環境の中でハマったのは、小学校三年生ぐらいのときに読んだ『織田信長』というマンガです。そのマンガから歴史の面白さも感じました、

原 すごく昔のマンガですか。

安彦 はい、僕が小学生の頃に出た作品です。僕がマンガを描き始めたのは、これのまねごとをして描いたのが最初なんですよ。

原 そうなのですね。

安彦 その話をインタビューでしていたら、現物を見つけてくれた人がいました。仕事場に現物があるので、そろそろ仕事場に行きましょうか。

tonarinoyj



【安彦先生の仕事場へ】

 

tonarinoyj安彦先生の仕事場。沢山の本が並べられている。

 

tonarinoyj小学生の頃に愛読していた『織田信長』(鈴木光明)を原先生に見せる安彦先生。

 

tonarinoyj原先生が子供の頃に衝撃を受けた『アリオン』のポスター前で。

 

原 安彦先生はカラーを何で描かれていますか?

安彦 こちらにあるガッシュですね。原さんは何で描かれているんですか?

原 僕はカラーインクです。ガッシュも一回トライしたんですけど、難しかったです。カラーインクは、重ね塗りはできないんですけど、仕上がりが一番早くて発色が良かったんです。

安彦 退色はしますか。

原 日にあたるとダメになるので暗闇で保管しています。

安彦 ガッシュやアクリルは暗闇じゃなくても退色しないんですよね。ただ、アクリルは試したことがあるんだけど、僕は全然ダメだった。

原 僕も最初はアクリルでした。『キングダム』の1巻~10巻辺りまではアクリルです。ただ、どうしても時間がかかるので悩んでいたら、井上先生がカラーインクを使っていたのでそちらに変えました。あとは肌色を塗るときにはコピックもたまに使います。

安彦 カラーを描くやり方も本当に人それぞれですよね。

 

tonarinoyj安彦先生は主に、カラーを描く際は「ホルベイン ガッシュ水彩」(不透明水彩絵具)を使用している。

 

【時代考証の罠】

 

――この辺りの書類が『銀色の路―半田銀山異聞―』(以下、『銀色の路』)の資料ですかね。

安彦 はい、福島の人が資料をくれるんですよ。

――地元の方々の協力が凄いですよね。

原 (『銀色の路』に登場する)早田家は実在するんですか?

安彦 実在なんです。

原 あっ、そうなんですね。百合子さんもですか?

安彦 百合子さんも実在の方です。ただ、おばあちゃんになった頃の写真はあるのですが、若い頃の写真はないので、想像して描いています(笑)。また、五代との話なんかも想像の部分が大きいです。

原 なるほど。

 

tonarinoyj

 

安彦 『キングダム』は時代考証に関してはどれくらいするんですか。

原 時代考証に関しては、元々は突き詰めようとしていたんですけど、今はこだわり過ぎないようにしています。古過ぎて資料があんまりそろわないですし、読者にとってはあまり意味がないので、そこにエネルギーを消費するよりはエンタメを作ることに注力しようと。
 そこに気付いてからは、逆に中国っぽくない衣装とかを描くようにしています。甲冑だったりとか。

安彦 僕も、時代考証は結構厄介なんじゃないかとも思うんです。例えば、アニメや漫画で馬に乗せると、「あの時代、馬はいない」とかよく言われるんです。でも、エンターテインメントなので、馬に乗らないとかっこつかない。

原 本当にそうです。僕も合戦物をやっている訳ですが、見せ場で大将同士の一騎打ちになることが多いんです。その時、やっぱり映えるので騎馬戦にするのですが、冷静に考えれば真っ先に馬が狙われると分かってはいるんです。けど、そうすると歩兵戦ばっかりになるので、作品としてはつまらなくなる。だから、敢えて分かりながらも、エンターテインメントとしての面白さを優先しています。

安彦 うんうん。



【『銀色の路』連載のきっかけ】

 

――仕事場を後にして

原 そもそも安彦先生は今回なぜ「ヤンジャン」で連載をすることになったのでしょうか。

安彦 これはもう現担当編集に声を掛けられたのがきっかけです。最初の接点はインタビューでしたよね。

――はい。YJ45周年を記念して2024年にインタビューをさせて頂きました。

安彦 今まで集英社とは何のご縁もなかったんだけど、たしかインタビューの後に「福島を舞台に短いものを描く」というのを聞きつけて、「じゃあ、うちで描きませんか」と言ってきたんでしたっけ。

――そうですね。概ねそのような流れでした。

原 それは、銀山の話を描かれようとしていたけど、「どの雑誌で連載するか」は決まっていない状態だったということでしょうか。

安彦 実は、元々福島の町から(町役場の発行する)小冊子所収の漫画を依頼されていたんです。福島で「安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」の巡回があり、その時に出会ったガンダムファンの町長に短いものを描くよう頼まれて。それを考えている時に、現担当編集から電話で「ヤンジャンで何かやりませんか」という話が出たので、町の人も連載の方が喜ぶと思ってヤンジャンに持っていきました。実際、町の人に連載の話を伝えたら、喜んでくれました。『銀色の路』の連載が決まってからは、冗談で「喜寿で集英社デビュー。『キングダム』と同じ雑誌だぜ」と周りに言っていました(笑)。

原 (『銀色の路』が連載決定した)当時担当編集と電話で打ち合わせをしていて、「安彦先生がヤンジャンで描きますよ」と言われて、びっくりしました。「えっ、あの安彦先生?」と三回ぐらい聞き直して。「何か企画物の読み切りですか」と聞いたら、「連載」と言われたんで、「えっ、本当ですか」と言って。すごく嬉しかったです。

安彦 軒先で雨宿りをさせていただくという感じなんだけど。

原 本当にうれしかったです。

安彦 ただ、その後に町の人から「ところで、うちの方はどうなっていますか」と言われて。「発展的解消じゃない?」と言ったんだけど、そちらの話も生きていたという(笑)。そのような経緯もあり、小冊子所収の作品も描きました。そっちは同じ銀山を舞台にしつつも、僕の先祖に焦点を当てた内容にしています。

原 それもちゃんと描かれたんですか。

安彦 ええ。

 

tonarinoyj安彦先生による『銀色の路』のアナザーストーリーである『半田銀山 昔語り』。
福島県桑折町限定での販売でしたが、本日3月19日(木)より東京の書泉株式会社の書店での販売が開始!
 是非両ストーリーともお楽しみください!
販売詳細については、書泉ホームページをご確認ください。

書泉HP


原 では、福島の町から依頼を受けて調べ始めたということなんでしょうか。元々銀山に興味を持っておられたというよりは。

安彦 全然興味なかった。

原 そうなんですね。

安彦 それで、福島の方に「資料をください」みたいなやり取りをして。

原 福島の方からの発信なのですね。

――(『銀色の路』の主人公である)五代友厚に関する関心は元々あったんですか。

安彦 全然なかった。とにかく、教科書に出てくる悪い商人というイメージだけ。悪名高い開拓使官有物払い下げ事件ってやつですね。

原 教科書に出ていたんですね。全然知らなかったです。

安彦 ほとんど欄外ですよ。印象が悪いから僕は覚えていたんです。ただ、最近テレビドラマや映画に登場したりでメジャーになってきたようです。最初は「あの五代が?なんで?」って感じだったんだけど、色々調べると悪い人じゃなさそうだって分かった。「払い下げ事件」も或る新聞の誤報で、それが政局に利用されたらしい。でも五代自身は一切弁明もせずに借金を残して死んでいる。蓄財とか自己保身を考えない人だったみたいね。薩摩人で有力者の知り合いも多いけど、そういうコネを「悪いつきあい」にしない。鉱山経営も当時としては良心的にやっています。戊辰戦争から何年も経ってない時期に、ムズかしいことだったと思うんだけど。「東の渋沢、西の五代」って言われたそうだね。渋沢栄一はお札になって「五代は悪者」じゃ可哀想すぎると思って段々興味が沸いてきました。

原 そうだったんですね。


【アニメ映画への再挑戦!?】


――原先生は普段何を中心にインプットされていますか。

原 映画は努めて観るようにしていますけどね。ただ、なるべく映画館に行こうとしていますけど、なかなか時間もなくて。

――昔から映画が一番インプットの中で多いと。

原 変わらずそればかりかもしれない。

――アニメ映画監督を考えた時期はなかったのでしょうか。

原 あります。僕は漫画家になる前に映画監督になりたかったし、今も『キングダム』が終わったら映画の方に行けたらなという思い自体はあります。畑がちょっと近いのは、勝手にですがアニメの監督かなとかうっすら思っているんですけど…。

安彦 ただ、アニメの監督は、スタッフが描いて机に積もった大量の絵と格闘するのがほとんどで、あんまり快感はないんじゃないかな。

原 そうなんですか。

安彦 ええ。紙も溜まるし、ストレスも溜まるしで(笑)。

原 でも、映画館で公開されるというのはやっぱり特別な感じがあるんじゃないですか。

安彦 確かに、公開のときには「やったな」って感じがあります。特にお客さんが来てくれたりすると、「ああ、やって良かったな」と思います。その点はいいかもしれない。

――安彦先生はまたアニメ映画に挑戦しようという気はありますか。

安彦 実はアニメ映画をもう一本ぐらいやろうかと考えているんです。

原 えっ、本当ですか。

安彦 幸いまだやる元気があるんで。

原 それはすごい。

安彦 アニメ復帰に関しては、今までも話が二転三転しちゃっているんです。「アニメはやめたけど、『ガンダム』限定でやるよ」と言って、2022年に『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を監督しました。ただ、今は『ガンダム』限定という枠を外してやってみようかなという気がしている。

原 それはオリジナルですか?

安彦 いや、完全オリジナルはできないですね。『ガンダム』とは別のものを基にして何か一本やりたいと思っています。

原 すごい。

――最後に原先生にも、今後のビジョンを伺いたいです。とはいえ、まずは目の前の『キングダム』完結でしょうか。

原 そうです。

安彦 いつ頃までに完結の予定なんですか。

原 あと五年で終わりたいと思っていますけど…。

安彦 完結したら、違う作品をやりたいという気持ちはあるんですか。

原 はい。むしろ、違うのにも挑戦したいので早く完結させたいという感じです。もちろん、『キングダム』には思い入れがあるので、しっかりと描き切りたいですが。

――こういうジャンルをやりたいとかはあるんですか。

原 いつも言っているんですけど、一個はやっぱり『ガンダム』が好き過ぎるので、『ガンダム』を超えるような作品を目指したいですね、「宇宙もの」で。

安彦 なるほど、そっちの方向性なのですね。

原 はい。アニメでやりたいです。

安彦 アニメで。

原 はい。

安彦 原さんは今50歳ですか。

原 はい。(2025年の)6月で50歳になりました。

安彦 50歳を過ぎたら月日が早いですよ。まごまごしていると、どんどん五年、十年たっちゃう。

原 それは困りますね。

安彦 やりたいことがあったら、早めにおやりになったほうがいいかもしれない。

原 確かに…。本日は楽しかったです。ありがとうございました。

安彦 こちらこそ、ありがとうございました。


tonarinoyj


『銀色の路―半田銀山異聞―』最終回は本日発売のヤングジャンプ16号にて掲載中!

『銀色の路―半田銀山異聞―』上下巻(完結)は5月に同時刊行予定!

『キングダム』最新第79巻も5月刊行予定!

 

*1:コミックス累計1億部突破を記念して刊行された『キングダム』の完全版。完全版1冊につき、コミックス2巻分を収録。大きい判型、真っ白い紙という豪華仕様。さらに、安彦先生も驚いた原先生による全話解説が付いている。現在、全20冊(YJC40巻分)が発売中。

アニメ『ワンパンマン』第3期ジェノス役:石川界人さんインタビュー

main

――絶賛第3期放送中ということで、第1期からこれまでの物語で、ジェノスの変わった一面、成長した一面、あるいは一貫して変わらない部分は何でしょうか?

石川 サイタマ先生に出会ったことによって、第1期で「孤高のサイボーグ」として一人で戦っていた時より、様々なキャラクターたちとの交流が増えていますね。内面での大きな成長は、第3期以降のこれから描かれる物語でしていくと思います。変わらないところは、やはりサイタマ先生のことを「先生」と慕い、弟子として常に学ぼうとしている姿勢と、サイタマ先生へのリスペクトの念です。

tonarinoyj

 

――ジェノスを演じるにあたり、第1期~第3期でのディレクションの変化や意識していることを教えていただきたいです。

石川 第1期の時は「サイボーグらしさ」を重視して「すごく淡々とセリフを読んでください」と言われていました。なので、初登場のシーンや、モノローグですら、テンションの起伏がそんなにないんです。あっても若干感情が滲むぐらいですね。「弟子にしていただきたい」とサイタマ先生に言った後から、「このサイボーグもきちんと人間である」と分かるような演技にしていきました。第2期では、サイタマ先生や他のキャラクターとの交流が増える中で、徐々に徐々に、サイタマ先生に対する感情が「頑なな尊敬」に変化していったと思います。感情の変化に伴って、台詞での表現も少しずつ豊かになっていきました。第3期では、現状で演じた#25~28には戦闘などの緊迫したシーンがまだあまりないので、日常的な、より人間らしさが出ているような演出になっています。

tonarinoyj

 

――約6年ぶりの収録はいかがでしたか?

石川 みなさんお忙しいので、一緒に収録できないことも結構ありました。ただ、『ワンパンマン』は、国内のみでなく海外でもかなり人気作品ですよね。アメリカなど海外ですと、日本のようにみんなが一堂に会してアフレコをする、ということがあまりないんですよ。だから、アニメ『ワンパンマン』がグローバライズされていくにあたって、海外のやり方に近くなっていってるのかも…とも思えて面白いです。また、一人で収録することによって、一役一役に時間をかけて役を作っていける、ストーリーを丁寧に積み重ねていける強みもあると思います。

――第3期の楽しみなところや、視聴者におすすめしたい見どころを教えてください。

石川 今までS級ヒーローたちはどんな怪人でも敵わないぐらい強い存在として描かれてきましたが、彼らが苦戦を強いられるような、今までにない強大な怪人が出てきますので、ぜひ注目してほしいです。あと、強大な怪人達の「圧」もとても楽しみにしています。

――「圧」と言えば、以前別のインタビューで、好きなキャラクターに阿修羅カブトを挙げていましたが…

石川 阿修羅カブトいいですよね!今までで一番圧があったんじゃないかな(笑)。

――第3期でヒーロー達と敵対する「ガロウ」の印象を教えてください。

石川 もう一人の主人公のようなキャラクターだと思います。サイタマは一般人にはちょっとキツいぐらいのトレーニングをやったら絶大な力を手に入れてしまった人。でもガロウは、一般人には到底予測もつかないほどの努力をして来たのに、サイタマのような力は得られていない人。努力を重ねてきていて、タレオの存在もあって、そして勝利を目指している…というキャラクターなので、魅力的な要素が備わっているのではないかと思います。そして、ガロウはただただ「悪事を働きたい」わけではなく、心の奥に「弱き者を救ってくれない世界に対する憎悪」を抱えている人です。そういう彼の人間性が、作品によっては主人公になり得る資質だと僕は思います。

tonarinoyj

 

――3期でガロウのほかに気になる怪人を教えてください。

石川 黒い精子です!かなりの難敵で、声を演じている梅原裕一郎さんが自分とほぼ同世代なんです。同世代の役者が強敵をやっているっていう、自分の中だけでのちょっとしたアツさがあります。

――サイタマ、ジェノスを除いて推したいヒーローは誰ですか?

石川 僕は1期、2期のプロモーション活動の時からずっと「地獄のフブキ可愛い、地獄のフブキ可愛い」って言ってきたんですが、物語が進んでいくうちに、戦慄のタツマキのことを「かっこ可愛い」とすごく思うようになってきて…。戦慄のタツマキいいですよね、戦慄のタツマキすごい好きです。彼女は地獄のフブキに対して冷たく見えますが、大事な存在に対して素直になれないことは、誰しもよくあると思います。親族に対してならなおさら。冷たい人間と思われがちな戦慄のタツマキの真意が見える展開が今後アニメで来ると思いますので、是非注目していただきたいです!

――自分の住む町にいて欲しいヒーローは誰ですか?

石川 番犬マンです。知らないうちに、何かが起こる前に有事の前に有事を防ぐ、みたいなやり方が、一市民として一番安心できます。自分の住んでいる町は平和なんだって信じる事ができるので、番犬マンにいて欲しいです。

――自分の住む町に一番来てほしくない怪人は誰ですか?

石川 全員嫌です(笑)。全員嫌ですけど、汚物系は特に嫌です。最近の日本の夏は暑くて湿度が高いので、汚物系の怪人の臭気が増して、気分を害する方がたくさんいらっしゃいそうです(笑)。

――ご自分が演じるジェノスを一言で例えると何ですか?

石川 「弟子」です。この「弟子」という言葉は、この先の3期の物語の展開を考えると、かなり重要なワードになってきます。「ジェノスが誰を師匠にしているか」というよりも、「誰にとっての弟子がジェノスか」を考えながら3期を見てもらえると、エモくなると思います。

――では、サイタマを一言で例えると?

石川 それはやっぱり、「師匠」ですね。

――最後に、「となジャン」読者にメッセージをお願いします!

石川 「となりのヤングジャンプ」をお読みいただきましてありがとうございます。ジェノスを演じています、石川界人です。皆さんがこの「となジャン」で読んでいた『ワンパンマン』の物語がまたアニメーションとして動き出しています。気になる戦いや気になるキャラクターの正体など、気になることは様々あると思いますが、やっと映像で皆さんの前にお届けできると思いますので、ぜひアニメも引き続き楽しみにしていただければ幸いです。

 

アニメ「ワンパンマン」公式サイト
 

コミックス35巻好評発売中!

表紙画像
©ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部

 

アニメ『ワンパンマン』第3期サイタマ役:古川慎さんインタビュー

main

――第2期で印象に残っているセリフやシーンを教えてください。

古川 印象深いシーンはたくさんありますが、第2期の第1話(#13)がとても好きですね。今まで謎だったキングの人となりがわかったり、キングが今S級であることにサイタマが関わっていたとわかる話です。キャラクター同士に実は繋がりがあって、その繋がりで人生があらぬ方向に行ってしまう…というところに、『ワンパンマン』という作品の面白さが出ていると思います。あとは、スイリューが登場する話が好きです。飄々としている時と切羽詰まっている時の演技に、“声優・松風雅也”の真骨頂を感じて…。現場でご一緒させていただいたのですが、本当にすごい先輩だなと改めて思いました。

tonarinoyj

 

――第1期と第2期でサイタマは「成長」はしていないと思いますが、「変化」はありますか?

古川 サイタマ自身は何も変わっていないのですが、物語の視点が第1期と第2期以降で変わったと思います。第1期は、自分の住む町に怪人が現れた、ヒーロー協会に行く、ヒーローになってみよう…など、サイタマの主観で描かれています。一方第2期では、他のヒーローや怪人達の主観が入り混じっているエピソードが多いんです。演技でも第2期以降は「他者から見たサイタマ」を表現するために、第1期の頃よりも「得体の知れない人にしたい」と思っていました。なので、声により「平熱感」を出そうと意識していたんです。つまり、もしサイタマに変化があったとしても、それはサイタマ自身の成長や変化というよりも、「サイタマの見せ方」を古川が変えようと思って芝居していた、ということですね。

――お芝居の変化があったんですね。

古川 あとは、僕の声自体がこの数年間でだいぶ低くなったんです。今第1期の時の声質を再現しようとすると、力が入ってしまって「サイタマ」にならないんですよ。なので、サイタマの声の基本のトーンが下がりました。声質の再現よりも、今出せる「サイタマらしいニュアンス」を重視したお芝居で、どうにか頑張っていきたいと思っています。

――第1期から第3期までのディレクションはどのようなものがありましたか?

古川 声に「平熱感」を出す、というディレクションは第1期から変わらずありました。あと、先ほどの話に繋がりますが、迫力満点の映像の通りに感情を乗せて芝居するよりも、もっと温度を低く、感情を込めない…悪く言えば「棒読み」にした方が、「得体の知れない強い存在」に聴こえるんです。ですから、「他人から見たサイタマ」がキーである第2期や第3期は、より温度を低くするようなディレクションが何回かありました。

――おっしゃる通り、第2期以降は第1期より底の見えなさを感じます。

古川 そうなんです。サイタマって変な人で、一見強くなさそうなビジュアルなのに、実は超強いって何なの!?っていまだに思います。しかも、生活や性格はとても庶民的なんですよね。そういったちぐはぐな異質感がサイタマの一番のアイデンティティだと思っているので、彼らしい異質さをより表現できるように意識しています。

tonarinoyj

 

――古川さんが歌うEDテーマ「そこに有る灯り」について、注目してほしいポイントを教えてください。

古川 第3期のEDは「ハッピーエンド!」という感じにしたくなかったんです。なので、サイタマやヒーロー、怪人達含めた色んな人達が、ちょっと羽を休められる曲になればいいな…と思って作っております。また、第1期と第2期のEDは、歌詞に少し繋がりを感じる部分があるので、第2期と第3期のEDも少し繋がりを感じるようにしています。ですが、受け取り方は聞き手に委ねているので、第2期EDの「地図が無くても戻るから」の別側面だと捉えている人もいれば、第2期からの地続きとして見ている人もいて、2曲を全く別のものとして見ている人もいていいと思っています。

――第3期でヒーロー達と敵対する「ガロウ」の印象を教えてください。

古川 本当にかっこいいですよね。魅力的なキャラクターって、作品が違っていたら主人公になっているんだろうなとよく思うんです。まさしく、ガロウはそういうキャラクターです。どこまで強くなるんだろう、どこまで窮地を切り抜けて行くんだろう、と、読者側が期待したり応援したくなったりします。タレオを決して見捨てない優しさもあって、「根っからの悪ではない」と思える人です。ただ、それでも彼はヒーローではなく、紛れもなく怪人側なんですよ。怪人なのに優しさがあって、応援したくなる、そういうキャラクター性に、ダークヒーローの旨味が凝縮されています。相当かっこいいダークヒーローで、その上で緑川光さんが声を演じているので、もうかっこよさが止められないです (笑)。

tonarinoyj

 

――第3期で楽しみな部分や視聴者の方へのおすすめポイントを教えてください。

古川 色々ありますが、童帝の戦いで彼のランドセルがしっかりがちゃがちゃ動いているところをアニメで見られることが楽しみです。声を演じる高山みなみさんのガッチガチの戦闘シーンのお芝居も楽しみですね。童帝のように、第1期・第2期で少しだけ登場してはいるけど、実際どんな人なのか、どんな能力なのかわからなかったS級ヒーローがたくさんいます。今回は彼らにスポットライトが当たっていくので、ぜひぜひS級ヒーロー達の戦いを楽しんでほしいです!

――自分の住む街にいて欲しいヒーローは誰ですか?

古川 無免ライダーですね!非常事態が起こったときに、率先して立ち向かってくれる人が一人でもいれば、絶対に後から誰かがその信念に賛同して付いてきてくれると思うんです。だから、はじめの一歩を踏み出してくれるような、無免ライダーが必要です!

――サイタマとジェノス以外で、古川さんが推したいヒーローは誰ですか?

古川 ゾンビマンですね。戦い方が好きです!あと、色々なところで言っているんですけど、ドラマCDでゾンビマンが自己紹介したときの「俺はゾンビマン」という櫻井孝宏さんの言い方が面白すぎて大好きで、それからずーっとゾンビマンを応援しています。

――では、自分の街に来てほしくない怪人は?

古川 ワクチンマンです。デカすぎるので!巨大な怪人には何があっても来てほしくないですね(笑)。

――古川さんから見たサイタマを一言で例えると?

古川 「一撃必殺」とか、「出たら終わる」ですね。あとは、「みんな待ってる」です。

――では、古川さんから見たジェノスを一言で例えると?

古川 「弟子」…でしょうね。あと少し、「ずるい」ですね。「パーツの付け替えで強くなる!?俺にもくれよ、その能力!」って思っています(笑)。

――最後に、「となジャン」読者にメッセージをお願いします!

古川 アニメが10周年ということに個人的にびっくりしています。「となジャン」で当時から読んでいらっしゃった方に関しては、それ以上に長い間『ワンパンマン』という作品を追っていらっしゃったと思うと、僕にとってはみなさんが師匠です。そして、アニメの先まできっとみなさん読んでいらっしゃるでしょうから、この先どういう風になるんだろうという予想や期待をしながら、観てくだされば嬉しいです。原作コミックスをアニメ化する、ということは、絵が動くこと、そして台詞や音楽という音がつくということが一番大きいと思います。音響、そしてキャストのみなさんの技と熱意をギュギュっと濃縮して収録いたしましたので、ぜひぜひ期待していただけるとありがたいです。よろしくお願いします!

アニメ第3期は毎週日曜23:45から放送中ッ!
石川界人(ジェノス役)インタビューは12月12日(金)掲載ッ!

アニメ「ワンパンマン」公式サイト

コミックス35巻好評発売中!

表紙画像
©ONE・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部

「映画『宝島』公開記念!大友啓史監督10,000字ロングインタビュー――“アメリカ統治下の沖縄”に向き合う妥協なき映画作り――」

main
構成・文/ヤングジャンプ編集部 写真撮影/市川秀明
tonarinoyj

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

壮大なスケールで“戦後アメリカ統治下の沖縄”を描いた映画『宝島』がついに明日9月19日(金)公開! 公開を記念して、7月ヤングジャンプ誌面に掲載された大友啓史監督インタビューを“完全版”で掲載。
第160回直木賞受賞作×異才・大友啓史監督×超豪華俳優陣。
さらに、構想6年、エキストラ延べ5000人、総製作費25億円という稀に見る壮大なスケール。そして、コロナ禍での2度の撮影延期といった度重なる困難。
映画『宝島』に向き合うため、背負ったプレッシャーと覚悟を大友監督がヤンジャンで語ってくれました。演出法から複雑な題材に向かい合う覚悟、見つめ直した“映画の面白さ”についてまで。10,000字超えの熱量たっぷりロングインタビュー。
映画『宝島』と合わせてお楽しみください!

監督プロフィール

大友啓史(おおとも・けいし):
1966年岩手県生まれ。映画監督。NHKに入局し、秋田放送局に配属。97年からは2年間本場ハリウッドへ留学。その後、沖縄を舞台にした連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001)、「ハゲタカ」等数多くの作品を演出。大河ドラマ「龍馬伝」(2010)を演出後、2011年にNHKを退局。独立後最初に取り組んだ『るろうに剣心』(2012)は、卓越したアクション表現が話題になり、シリーズ化される。その後も、『秘密 THE TOP SECRET』(2016)や『レジェンド&バタフライ』(2023)など、映画現場の最前線で作品を撮り続けている。

 

tonarinoyj

 

【原作『宝島』に惹かれた理由】

YJ 本作は真藤順丈さんによる原作がありますが、原作のどのような部分に惹かれましたか。

大友監督 まず、今の僕らがほとんど知らない、戦後の沖縄を舞台にしている点に興味を持ちました。第二次世界大戦後のアメリカ合衆国に統治されていた時代の沖縄で、沖縄の方々がどういう感情を抱いていたのか、どういう思いで生きていたのかということを、今となってはほとんどの人が知りませんからね。

YJ 特に今回は本土復帰前の複雑な時代が舞台です。

大友監督 そう。だからこそ面白いと思いました。また、原作を読んだ時、物凄い熱量に満ちた小説だと感じました。当時の過酷な時代状況の中で、登場人物たちが生きることを投げ出さずに、必死で生きている姿が魅力的だなと思って。映画でも、激動の時代に生きた登場人物たちの感情を、当時を知らない観客でもちゃんと追体験できるように描きたいと思いました。

 

【時代の転換点で人々が必死に生きる様子を描きたい】

YJ 大友監督は、漫画原作や小説原作の作品を多く手掛けていますが、映画化する際に題材を選ぶ基準はありますか。

大友監督 様々な経緯があるので時と場合に依ります。時には、自分の志向と違うかもしれないと思っても、新しいことに挑戦する必要もある。また、実際に興味を持って掘り下げていくと、どこかで自分の関心事と共通点が見つかったりする。なので、選ぶというよりは、様々な題材に取り組みながら、自分の世界観を大きく広げていきたいと思うタイプなのかもしれません。ただ、時代が大きく変わる転換期で、人々が必死に生きている空気感は凄く好きですね。例えば、『るろうに剣心シリーズ』でも、幕末から明治という新しい時代になって、激変する時代で生きざるを得ない人々を描いています。侍である時代は既に終わっているのに、まだ侍の魂を心の中に抱えてさすらうような人々の話ですし。

YJ 大河ドラマの「龍馬伝」とかもそうですね。本作『宝島』もその点で大友監督の過去作と共通点があるように思います。

大友監督 戦後の沖縄は、日本本土が高度経済成長で発展していくのとは対照的に、アメリカという強大な国家と琉球政府という小さい行政府が向き合っていました。激動する複雑な環境の中で多くの人たちが時代と抗いながら生きていた。その点では、過去に監督した作品にも通じるところがあると思います。

 

【美術の作り込みは演出に通ず】

YJ ゲート通りの風情ある様子や特飲街など、当時の沖縄を体感できるような美術にも強いこだわりを感じました。美術などを考える際はどのような点を重視していますか。

大友監督 美術の作り込みというのは、その時代を正しく表現できているか否かというだけが大事ではないんです。それ以上に、役者たちがその空間に置かれたときに、実際にその時代に生きていたかのような錯覚になれるかどうかがもっとも大切なことです。
中途半端な作り込みだと、僕自身が役者をそこに置けないと思ってしまう。役者の視界に入ってくる美術のディテールができるだけ当時の時代に近い方が、演じる上ですごく助けになると思うんですよね。
特に俳優たち自身が知らない時代を演じてもらう『宝島』のような作品では、美術は芝居のリアリティーみたいなものを引き出すための装置でもあると思います。

YJ 役者への演出自体がそこから始まっているんですね。まず、あの時代の沖縄の空気を作り込んで、役者に感じてもらうという。

大友監督 そう。演出や美術、芝居といった映像を成り立たせる要素は、線が引かれて別々に存在するのではなく、全部有機的に繋がっている。あの時代の沖縄の登場人物を演じる役者たちが、感情を引き出せるようなコンディションをスタッフ全員が同じ方向を向いて作れるかどうか。
例えば、実際にあった宮森小米軍ジェット機墜落事故を再現したシーンがありますよね。あの悲惨な場面をグリーンバックを使って合成で作っていたとしたら、もしかしたら(実際の映画内で)映っているようなヤマコの慟哭は出てこないかもしれないです。事故現場に飛び込んでいくグスクの芝居もそう。校庭に巨大な墜落の痕跡があって、みんなが子供たちを助けようとして必死でうごめいている。その状況が(役者の)眼前に広がっているかによって、彼らの心の芝居が変わってくるんじゃないかと思います。

 

【あの時代の沖縄を感じ取れる役者・妻夫木聡】

YJ 役者に対して細かい指示はそんなにしないのでしょうか。

大友監督 時と場合に依りますね。ただ、まずは役者本人が思うようにやってみて欲しいという思いがあります。もちろん、僕自身も思っていることや、こう動いて欲しいといったことはありますし、役者も苦しくなると何か指示が欲しくなる。でも、そこで頑張って「指示しない」ということも時には大事なことです。周囲の環境を作り込んで、そこで役者本人がどう感じるか。その主体性を引き出すことを優先しています。それはスタッフに対しても同じですね。
もちろん、もうちょっとこうして欲しいと思ったことは当然伝えていきますが、本作に集まるようなレベルの役者の場合、各々がちゃんと準備をして、僕が必要とするものを感じとってくれますからね。

YJ 本作は妻夫木聡をはじめ、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太といった役者が出演されて、とても豪華ですよね。例えば、主演の妻夫木聡さんはどのような役者さんでしょうか。

大友監督 沖縄の佐喜眞美術館というところに丸木夫妻iの描いた「沖縄戦の図」という絵があります。妻夫木君はそれを見て役作りしたらしいです。友人に連れられていってその絵を見たときに、「僕は今まで何も知らなかった」と感じて、言いようもない感情から泣き崩れちゃったんだって。沖縄で実施した完成披露試写会でも、妻夫木君はそのことを思い出しながら言葉が出なくなっちゃったんです、お客さんがいっぱいいる前で。
そういったことを感じられる感性の人だからこそ、難しい時代の沖縄を扱った本作の主役を務められるんだと思います。
 佐喜眞美術館もそうですが、沖縄は遠いので、僕も時折何か心を鎮めたいときに、埼玉の東松山にある丸木夫妻の「原爆の図 丸木美術館」へ足を運んでいました。丸木夫妻の絵を見ると、悲しみの果てにある、人間という生き物が存在として抱えている尊厳というか、何か根源的なものを感じ取ることができます。

YJ そういった絵を見て、様々なことを一気に感じ取れる妻夫木さんのような役者じゃないと本作は務まらない。

大友監督 そうなんです。務まらない。映画は集団芸術ですし、とりわけ『宝島』のような映画は監督一人じゃ背負えないんですよね。沖縄の歴史、そして今なお生きている人たちにも繋がっている感情を背負っていくには、そのような感性を持つ役者、そして色々なことを共有してくれるスタッフがいてくれないと出来ないんです。

tonarinoyj

 

【感情を露わにする場面の演出】

YJ 本作は大事な場面で強い感情を表現しているのも印象的でした。特に、物語の大きな山場“コザ暴動”のシーンでは怒りを露わにする場面もありますよね。

大友監督 そこには当然怒りも含まれますが、あのシーンの場合、もっと複雑な感情がそこには表れているように思います。一言では言えないような、簡単ではない感情を必要とする場合、役者本人たちの覚悟や準備、蓄積がやはり必要です。僕は沖縄の人たちと「ちゅらさん」以来とても長く付き合っているけど、彼らはすごく優しい。沖縄の人たちが怒ったところをほとんど見たことがない。本当に優しいよ。
 そんな沖縄の人たちでも、許容できる一線を越えるようなことがどんどん続いていって、我慢できず、コザ暴動でいよいよそれが爆発する。そういった場面を演出する時も、ちゃんと役者が眼前で起きていることをまぶたの裏に焼き付けられるように、一つ一つのディテールを丁寧に表現しないと、俳優の中に嘘のない感情が蓄積されていかない。だから、さっきの繰り返しになるけど、周りの環境をしっかり作っていき、彼らが感じることのできる要素を時間含めてしっかり与えていく。もちろん、それは沖縄という土地がそのまま用意してくれているところもある。けれど、何より、周りのものをちゃんと受け止める感度のある役者たちであるということ、それを切り取ることのできるスタッフであるということに尽きると思います。撮影しながら、改めて本作の俳優たちの魅力、そしてスタッフの力量を知る思いでしたね。

YJ 信頼関係ですね。

大友監督 はい。

感情を露わにする場面の演出

 

【大勢のスタッフとの連携】

YJ 本作は(日本映画の中で)製作規模がとても大きく、時代考証や作り込みも難しいと思います。そのような場合、どこまで監督がチェックし、どのようにスタッフと連携しているのでしょうか。例えば、美術で言うと、美術監督にお任せしているのか、最終チェックみたいな形で監督がチェックするのか、どのようなコミュニケーションを取っていたのでしょうか。

大友監督 基本的には事細かく最終チェックをします。まず、脚本の中のイメージをスタッフみんなで共有して、それをベースに演出チームが作っていくのに必要な資料を集めながら美術部とコミュニケーションしてどういう美術にしていくかを探っていきます。例えば特殊飲食街をどうするか、ゲート通りの風情というのはどうするか、沖縄の家をどういう風に作っていくかとか、そういうことをスタッフ同士で詰めて、何度も画に書き起こしながら、最終的に僕がチェックしてゴーを出すという感じです。
もちろん作業が膨大なので、見れているところと見れてないところもあるんですが、基本的にはできるだけちゃんと確認したいと思います。というのも、僕も最初からすべて、辿り着く場所を知っているわけじゃないですからね。小道具とか美術とか、スタッフが作ってくれたイメージをチェックしている内に、僕自身のイメージが膨らんでいくことも多い。スタッフが僕にどんどんボールを投げてきて、僕がそれを投げ返していく中で、映画のイメージもどんどん広がっていくんですね。

YJ なるほど。お互いにボールを投げ合っていくなかで、監督自身の作品理解も深まっていく。

大友監督 ただ、例えば、沖縄の着物の柄で、どれが正しくてどれが間違っているかとかまでは、僕自身が事細かには調べる余裕がない。そこは、それぞれプロなので、その専門性に委ね、一方で僕は、スタッフのみんなが自分の仕事に誤魔化しなく、思う存分力を発揮してもらえるよう場を整えていくというか。

大勢のスタッフとの連携

 

【難しい題材に向き合うときに問われる誠実さ】

YJ スタッフに対しても、最終判断は監督が持ちますが、基本的に自主性を大事にされるのですね。けど、自主的に動いてもらうというのは相当難しいことですよね。

大友監督 人は指示されると楽をするものですから。特に僕が言ったことは、“監督が言ったのだから=正解”という風に捉えられてしまう。僕の言うことが間違っているかもしれないという発想がなくなるのが一番怖いですね。だから、相手が手を抜いていたり、誤魔化そうとしている時には、監督の僕が気づけるようにしておかなきゃいけない。
特に、本作は一面で史実を扱っているので、スタッフも最大のケアーと努力をして、歴史や事実に誠実に向き合うという姿勢が大事でした。あの時代を生きてきた関係者の方々は今もたくさんいらっしゃるわけで、その人たちに向けても、いい加減な表現をするということは絶対してはいけなかった。しかし、人はくたびれたり、周りからのプレッシャーがあったりすると、安直な方に行ってしまいそうになる瞬間がある。そこで踏みとどまれるか否かが、実写映画をやる僕らの勝負だと思います。ただ、本作に関しては沖縄の複雑な時代を描くということで、スタッフ間でも妥協しないでちゃんとやらなきゃいけないという意識が強く共有されていたように思いますね。

YJ そのようなせめぎ合いの先に作られたのが、例えば先ほど話に出た“米軍ジェット機墜落事故”のようなシーンなのですね。

 

【当時の人々の必死な生きざまを描く】

YJ 本作は“戦後アメリカ統治下の沖縄”というあまり顧みられてこなかった時代を描いています。その際、例えば米軍関係者もしっかり描かれています。言ってしまえば支配者側である米軍を描く際、何か意識していたことはありますか。

大友監督 基本的に善悪二元論で描かないということですね。この物語の中には、絶対的な決定権がある立場の人は誰一人出てこなくて、誰かが決定した事柄の下で、ある意味それぞれの人間が自分の役職を全うするために一生懸命生きているんですよね。
 例えば、(米軍高官の)アーヴィンにしたって、色んなことを取り持とうとしてグスクに目星をつけて近づき、アーヴィンなりのやり方で島に調和をもたらそうとしていたことは間違いない。当たり前ですが、人には色んな側面があるので、その人間性に膨らみを持たせるためには、作品内の役割だけで人を決めつけていかないということが大事な気がします。
 僕らの仕事は、過去のことに対して断罪したり、糾弾したり、批判したりすることではない。あの時代の人々が、どんな環境に置かれてどういう感情を持って、どのような生き方をしているか。そして、「その生きざまを、皆さんどう思いますか」ということを物語の中で提示するのが僕らの仕事なわけです。

YJ 過去のことに関しては、ついつい現代の価値基準で判断してしまいがちですが、そういうことではないのですね。

大友監督 はい。当時はそもそも、食べていくこと・明日生きることに必死だった時代ですから。そこに道徳的な善悪とか、道義的な判断が入る余裕がなかなか生まれない。とにかく生きなきゃいけないので、ね。でも、その中でも、何か「尊厳」という哲学的な言葉が浮上してくる瞬間がある。その瞬間を浮き彫りにするのが今回の僕らの仕事でしたね。

YJ なるほど。ありがとうございます。

 

【捨て身の覚悟で向き合った『宝島』】

YJ これまでも重厚な作品を多く手掛けてきた大友監督ですが、実際の悲惨な史実を扱っているという点や製作中断という困難も含めて、本作は特に大変さが伺えました。

大友監督 こんなしんどいこと二度とできないと思ったくらい大変でしたね(笑)。やっぱり背負っているものがとても重かったですから。こういった題材をやるときは、「もう自分の選手生命はこれで終わりだ」というくらいに思わないと出来ませんね。覚悟を決めるというか。感覚的には大河ドラマ「龍馬伝」(2010)をやっていた時に近いかもしれません。「龍馬伝」では、会社にいながらも、それまでの大河の撮影スタイル、常識や慣習をすべて変えてやっていましたから。「龍馬伝」を観て、映像をやりたいと思ってくれるような人が出てくるようになると良いよねという話を主演の福山雅治さんと当時話していました。同じように、『宝島』も深く誰かに届くと嬉しいと思って作りました。

大友監督

 

【“映画の面白さ”に向かい直す】

YJ とても濃いお話が続いたので少し脇道にそれて…。現在活躍中の映画監督で気になっている方はいらっしゃいますか。

大友監督 難しい質問ですが、海外の監督で、例えばディミアン・チャゼル監督iiには興味がありますね。映画産業の黄金期である1920年代ハリウッドを題材とした最新作『バビロン』 (2022)も凄く好きなんですよ。元々、『ラ・ラ・ランド』や、その前のジャズを扱った『セッション』を観て、今どきの若いフィルムメーカーというより、むしろ良い意味でオーソドックスな感性で、新しいタイプの作品を作る監督だと思っていた。そんな監督が、コロナ禍で難局に陥っていた映画の歴史を改めて見つめ直そうという作品を撮ると聞いて、『バビロン』は観る前から凄い興味があった。実際観ると、冒頭で延々とパーティーをやって、時間を含めあらゆることを消費していく。そこで、ただ無茶苦茶に消費し尽くすだけの、かつてのハリウッドの、祝祭的なパワーみたいなものを延々と見せつけてくる。その冗長さと、それゆえの豊饒とカオス感に、妙に心が躍らされたんですよね。

YJ 物語を展開するという観点で言うと、ある意味で無駄なシーンと言われるリスクもありますよね。特に、最近は“早送り視聴”が話題になっていたり、むしろそういったシーンを映画経験として楽しむことが減っている印象です。

大友監督 現代では、物語を展開するのに必須の情報以外は(鑑賞者にとって)邪魔になるという考えの方が主流になっていると思います。単純化した例を出すと、学校という社会を舞台に描くのに、学校の中にいる生徒間の葛藤はあるけど、先生の存在は極めて存在感が薄い、そういった類の作品を目にすることが増えた気がする。ドラマとして転がしていくために必要な、最低限の生徒間の関係性しか描かれていないんです。でも、普通は学生同士で何かあったら先生や校長、役所、教育委員会の大人たちといった関係者・(教室の外に広がる)社会も絡んでくる。しかし、そういった我々の周りに本来ある周縁の社会をどんどん削いで、物語を展開させるために必要な、身の回りの情報だけで描くということが増えている印象です。
それはそれで良いと思いますが、一方で、「展開」のみに還元されるのではない、映画の豊かさや面白みもやはり無視してはいけないと思います。『バビロン』の冒頭のパーティーシーンで重要視されているのは、身近な人間関係だけではなくて、ハリウッド産業全体やその外にある、社会全体の無意味な蕩尽に向かっていく空気感とか、そういうものをとても大切にしているように思います。 何かストーリー以上の「抽象」を捉えようという意思を感じて、僕はすごい面白く見たんです。物語展開だけではなくて、スクリーンで起きていることに偏執的な目線を注いで、そこのある種の豊かさとか、贅を尽くした映画作りの豊かさを見せていく映画なんですよね。

YJ 確かに、映画には“情報”を伝える以上の面白さもあるのではと思います。

大友監督 はい。ベルトルッチiiiの『1900年』(1976)とかは知っていますか。

YJ 5時間を超えるベルトルッチの野心的傑作ですね。

大友監督 あの作品はイタリアの現代史を描いているわけですよね。ベルトルッチの思想も色濃く出ていますが、そういった主義・思想を抜きにしても、イタリア現代史を五時間とか六時間の映画で描くって、そういうトライアルを、作り手としては一度はやってみたいわけです。『ゴッドファーザ―』も3部作という長さを使ってそういうのを描いている。もちろん、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)もそうです。

YJ そういった物語とは関係ないところでの驚きやディテールに見られる豊かさというのはありますよね。

大友監督 『バビロン』には、それらの作品で感じたような面白さがありました。それに、ディミアン・チャゼルのハリウッド映画に対する物凄い愛が込められていたので、高く評価されるのではないかと思っていました。しかし、実際には期待されたほど賞レースで選ばれることもなくiv 、興行的にも不振だったと言われています。コロナ禍で危機にある映画産業を描き直すという側面でも、豊かな映画経験を生み出すという側面でも、多くの挑戦をしていたあの作品が評価されなかったのは、ショックでした。

 

【“コザ暴動”の描き方】

YJ 確かに、賞レースでも評価されなかったのは驚きでした。今のお話を踏まえると、『宝島』は時代の流れを踏まえつつも、その中で豊かな映画体験を作ろうという意識を感じました。大きな見せ場である“コザ暴動”にも長尺をあてて、当時の時代の空気感を描こうとしているように思いました。

大友監督 コザ暴動が起きたという情報を見せるだけだったら、もっと短い時間にできると思います。つまり、物語を進めるための情報として描くなら、長い尺もエキストラも含めた周辺の人物たちも必要ない。しかし、“コザ暴動”というのはそれだけじゃないよねと。あの時代に巣くっていた言葉にならない感情や蠢く空気感。“戦後アメリカ統治下の沖縄”という時代や世界そのものを画面に取り込もうとすると、あのような描き方になる。

YJ スクリーンで観る度に新たな発見がありそうな豊かな経験でした。大友監督にとっては、『宝島』を作る経験が、ある意味で“映画の面白さとは何なのか”ということを考え直す経験になったのですね。

大友監督 何度も立ち止まり、中断の危機すらあった企画ですからね。どうしても、色々なことを考えざるを得なかったですね。

 

【コロナ禍での闘い】

YJ 『宝島』はコロナ禍の影響で二度撮影が延期されたと聞きました。コロナ禍を大友監督はどのように過ごされましたか。

大友監督 まず、『るろうに剣心シリーズ』の最後を飾る最終章2部作が、1年公開延期となりました。さらに、やっと公開したと思ったら、緊急事態宣言が出て大都市圏での公開が難しくなった。

YJ 大都市で上映ができないということは、興行のほとんどが飛ぶということですよね。

大友監督 はい。なぜ空気の入れ替えや場内で話さないなど、映画館側も観客も努力を続けてきた映画館がダメで、舞台など他のジャンルは許されるのかなど、行政の線引きの基準に納得いかない部分も多かったですし、十年かけて作った『るろうに剣心シリーズ』がなぜこんな目に遭うんだと、心底悔しかった。だから憲法学者に話を聞きに行ったり、都庁に行ったりしました。
 その時期に、「COME BACK映画祭v」というのを全興連の会長だった佐々木さんが池袋で立ち上げて。コロナ禍でスクリーンにかからなかった映画作品を上映しようというイベントです。せっかく大金をかけて作った作品が、一度もスクリーンにかからずに終わっていくという状況があったので。

YJ 特に映画の場合は、小さな自主制作でも数千万円かかります。それだけ力を入れて制作した映画が一度も上映されてないというのは悲惨な状況ですね。

大友監督 上映館が絞られた『るろうに剣心』の場合でも、「COME BACK映画祭」で取り上げた作品の場合でも、そこで起きている声なき声や悔しさというのは、想像力を広げていくと“アメリカ統治下の沖縄”の人たちの声と相似点があるような気がするんですね。

YJ なるほど、奪われたという。

大友監督 そうそう。僕の中で、コロナ禍でのここ数年のことが全部つながっていて、そこで感じたこととかも『宝島』には吐き出されていると思います。

 

【若い人にまっさらな頭で観てもらいたい】

大友監督 僕はちょっと希望を持っているんです。若い方々がまっさらな頭で観たときに、どういう風にこの映画を受け止めてくれるのかなと。

YJ 先入観なしに。

大友監督 そう。妻夫木君と全国宣伝キャラバンをやっているんだけど、若い人に届くんじゃないのかなという風に希望を感じました。「あっという間でした」とか、「2時間半ないしは2時間ぐらいの感覚でした」っていうような感想も頂けて嬉しいです。難しい題材を扱ってはいますが、様々な演出上の工夫やテクニック、物語の語り口を使って、「一瞬も目をそらさせないぞ」という気持ちで作ったのでね。(取材直前の)6月初旬に、沖縄で完成披露試写会をしてきました。そうすると、皆さんの感想に僕らが泣かされるもんね。この映画で伝えたかったこと、当時の沖縄を生きた人たちの感情がストレートに届いているという感じがして。

YJ ちゃんと届いているという実感があったのですね。

大友監督 はい。「あぁ、やっぱり作ってよかったな」と思いました。

YJ 本日は貴重なお話をありがとうございました。大変長い時間語って頂き有難かったです。

大友監督 こうやって伝えていきたい作品なんですよ、真正面から。本当は観る方全員と一対一で話したいくらいです(笑)。

全編熱量に満ちた3時間11分。
かつてないスケールで“アメリカ統治下の沖縄”を描いた叙事詩、
映画『宝島』は9月19日(金)公開! 是非劇場へ!

『宝島』あらすじ

アメリカ統治下の沖縄。そこに米軍基地から物資を奪って生活する若者たちがいた。オン(永山瑛太)は、彼らのリーダーであり、町の英雄だった。
しかし、英雄は米軍基地襲撃の夜に消える。
オンと深い関係だったグスク(妻夫木聡)・ヤマコ(広瀬すず)・レイ(窪田正孝)の幼馴染三人は、それぞれの人生を歩みながら、英雄失踪の謎を追う。
20年を経て明かされる真相。そして、アメリカ統治下の沖縄を生き抜く彼らの生き様とは――。

 

 

i広島出身の画家である丸木位里、丸木俊の夫妻。二人は原爆投下直後の広島で救援活動に従事。その後、原爆の惨状を長期間にわたり描く。さらに、広島だけでなく世界の惨状にもテーマは広がり、アウシュビッツや沖縄戦などを描いた。
ii2014年に『セッション』を監督し、当時28歳という若さでありながら、狂気的な師弟関係や音楽に伴う痛みにフォーカスした新鮮な切り口で話題に。その2年後の『ラ・ラ・ランド』も大ヒットし、ハリウッドの新進気鋭の監督として注目されている。
iiiイタリアの巨匠。詩人の父の影響を受けて、幼い頃から詩や文学に親しむ。29歳の若さでファシズムに突き進む青年を流麗な映像で描いた『暗殺の森』(1970)を監督。その後、『1900年』(1976)、最後の皇帝・溥儀の生涯を描く『ラストエンペラー』(1987)といった壮大なスペクタクルの作品を監督した。
iv例えば、アカデミー賞では「作曲賞」をはじめとした三部門にノミネートされたのみであった。
v2021年12月に開催。名作から普段目にできない掘り出し作品まで計59作品が池袋にて上映された。大友監督作品では、「るろうに剣心 最終章 The Final」の上映が行われた。