
ヨシモト×YJの四週間!!
第3回はお笑い界のど真ん中を自分たちだけの“笑い”で突き進むジャルジャル!! 笑いに懸ける情熱から漫画愛までの直球赤裸々インタビュー!!
ジャルジャル
後藤淳平(ごとうじゅんぺい)
生年月日:1984年3月20日
出身地:大阪府
福徳秀介(ふくとくしゅうすけ)
生年月日:1983年10月5日
出身地:兵庫県
所属:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
―お二人は、高校の同級生ということで。そもそもなぜお笑い芸人を目指そうと思ったのでしょうか。
福徳 当時、携帯電話がはやり出した時期で、後藤とクラスは違ったんですけど、授業中によくメールで、先生にばれへんように笑かし合いみたいなのをしてたんですね。で、休み時間に、「あれ、笑った?」「ああ、笑った、笑った」みたいなことをしていて、それが徐々に派生していった感じです。最終的にNSC(吉本の養成所)へは僕が誘ったんですけど、願書出す直前ぐらいでやっぱやめとくわと一度断って。
―それはなぜですか?
福徳 僕は高校ラグビーやっていて、当時は大学でもラグビーをやるメンバーと遊んでたんです。その友達にNSC行くという話をしてた時に、「絶対無理やって」みたいなことを結構長々と言われて。何かそれでちょっと洗脳されてしまって笑。やっぱやめとくわってメールしたんですよね。
後藤 で、僕が、いや、行こうやと誘い直しました。やっぱり関西やなって思うのが、同じ学校の同じ学年で僕ら以外にもNSCに入ったやつがいたんですよね。
後藤 ブームやったのかもしれないですね、もしかしたら。
―そうなんですね。ジャルジャルさんはコントも漫才もすごく独特なスタイルのものが多いなと感じているのですが、何か自分たちの芸風に対するこだわりのようなものはありますか?
福徳 僕ら高校のときに、休み時間に二人でよく保健室行ってたんです。中高大一貫教育のところだったんで保健室登校の中学生も来るんですよ、その保健室に。そこで、そういう子たちをよう笑かしたりしてたんです。結構それが基準になっていて、そのときのスタイルを変えないように。
―なるほど。例えば、どういうことをやって笑わせていたのでしょうか?
福徳 今考えると、多分クラスの人気者がわかりやすい感じのお笑いをして、教室でウケていて。でも、そういうのになじめない子が多分保健室登校になるから、もしかしたら、僕らはそういうど真ん中とはちょっとずれたお笑いをやってたのかもしれないです。
―なるほど。単刀直入にお伺いすると、自分たちは若干王道から外れているというふうに考えられているということですか?
後藤 ネタで言うと、理想はジャルジャルにしかできないネタをやらないと意味ないなとは思っています。
―すごい変なキャラクターとか、M-1でやられているような、いわゆる両ボケ漫才だとか、そういうネタをやる上で参考にされている方や、芸人さんはいるのでしょうか?
福徳 キャラクターのモデルになっている人は結構います。関西大学というでっかい大学に行ってたんで、やっぱり変なやつばっかりだった。変なやつ、めちゃくちゃおったんですよ。
―なるほど。その人達を見て。
後藤 ほぼドキュメンタリー的に、ちょっと味つけするぐらいの実話ネタも結構あります。
福徳 みなみくんというコントは特にラグビー部の後輩なんで、もうあのまんまで。さすがにあそこまでじゃないですけど。
後藤 あれはちょっと誇張してますけど、声とか。
―今、現状、ライバルだなと感じている芸人さんっていらっしゃったりするんですか?
福徳 ほんとにいろいろ、正直いっぱいいるんですけど、わかりやすい理由として一組上げるんであれば、僕はしずる。本当に間違えられるし、いまだにちゃんと覚えられてないし、こないだもロケしてたら、「しずる」ってめっちゃ言われたし、しずるのユーチューブ見せて、コント見せても、それでもまだ僕らのことしずるって思い込んでる。ほんまにそういう意味では、やっぱりしずるとは明確に差をつけたいところです笑。
―しずるさんも逆にジャルジャルと街で言われるんですかね。
後藤 あ、言われるみたいですね。しずるで画像検索して、二個目にジャルジャル出てきますからね。そりゃごっちゃになりますよね。
―それはネットがいけない笑。漫画についてもお伺いしたいなと思っているんですが、『めぞん一刻』はお二人ともお好きだということで、何か思い出とかってありますか。
福徳 最初、電車の中吊り広告で、大学のときに、コミックスじゃなくて、何か……。
後藤 コンビニで売ってるような。分厚いやつ。
福徳 あれが広告で出てて、面白そうやなと思って買ったんです。で、読んだらめちゃくちゃおもろかったんで、後藤にすぐ教えて、買ったやつを渡して。また、次の週に次の巻が出るんかな、たしか。僕が全部買って渡してたんですよね。
後藤 でも、途中で追い抜いたんです、僕が。ネットで続きを買ったんですよ。読みた過ぎて。文庫版だったかな。
福徳 めっちゃ腹立った笑。
―どういうところが好きなんでしょうか。
福徳 基本恋愛系がめっちゃ好きで、その中でもやっぱりずっとこのうじうじ感があっての、最後がやっぱりすご過ぎて、ベッドシーンいくじゃないですか。
―そうでしたね。
福徳 ベッドシーン、布団で一緒に眠るんですよ。要は、セックスするんですよ。
後藤 つかず離れず感、ずっと続いて、途中でライバル出てきたり、べたな展開なんですけど、それが面白いんですよね。
福徳 やっぱりいろいろ考えましたね。バツイチいけるかな、俺って。そのとき大学生だったんですけど、すごいめっちゃ考えましたね。子供おらんからいけるかとか。あと、前の旦那の名前を犬につけてるんですよね。
後藤 惣一郎さん。
福徳 毎回「惣一郎さん」と言うたびに前の旦那を思い出すわけじゃないですか。それも考えました。元彼からもらったものをもし彼女がつけてたら許せるかなとか、めっちゃ考えさせられましたね、この漫画は。
後藤 読み終わってから二カ月間ぐらいはこれのこと以外考えられなかった。はまりましたね。
福徳 ほとぼり冷めるのに時間かかるやつ。

―福徳さんは『マキバオー』もお好きとのことでしたが、何か思い出とかは。
福徳 死ぬほどおもろくて。兄ちゃんが鼻血出たときに、鼻にティッシュ詰めながら『マキバオー』を読んでたんですけど、玉しゃぶ郎ってせりふのところで兄ちゃんが、ふぉーって笑って鼻血がびゃーっとついて。いまだに実家にある単行本は血だらけで。
―こういうギャグというのは、今の芸人としてやっていく中で生きてたりすることはあるんですか。
福徳 衝撃を受けたのは、このルックスで泣かせてるというということですね。チュウ兵衛が死ぬところとか、もうほんまに泣けてしゃあない。僕らのコントも笑いと涙があったらいいなと思いますね。

―コントや漫才と漫画、こういうところ似てるんじゃないかなというか、共通しているんじゃないかなと思ったりするところってありますか?
後藤 ラジオとかでも即興コントやってるんですけど、即興でやるコントは漫画的になることが多いですね。
福徳 高いところから落ちても死なへんとか、やっぱり台本にすると多分、いや、死ぬからこの展開やめとくかってなりそうなものですけどね、即興でやると、その後生きてたほうが都合いいから、やっぱり生かすし。
―ちょっと能力者みたいな感じになるという。ふだんコントとかをつくるときのモチーフは、例えば、先ほどの友人などのほかに、こういう漫画を読んでとか、こういうドラマを見てとか、ほかの作品からインスピレーションを受けてネタをつくるようなことってありますか?
福徳 僕ら、ネタ、八千個ぐらいあるんですけど、ほんまにいろんなところから頂戴してると思っています、多分。
後藤 意識して、ここからいいネタできひんかなという観点で漫画を読んだり、映画見たりとかいうことはないですね。むしろ、『バカボン』を一回読もうとして、ちょっとだけ読んだらもうおもろ過ぎたから、「あ、やば、何か影響されるかも」と思って読むのやめましたね。
―なるほど、逆にそうなんですね。ギャグ漫画とか読むと。
後藤 そうですね。『バカボン』は特に。ふだん無意識で読んでますけど、それが意識するぐらい、何これってなりました。
福徳 僕、『浦安鉄筋家族』が死ぬほど好きなんで、読むたびに、これを超えるぞという意識で読んでますね。
―なるほど。影響を受けないようにするか、影響をされてもそれを超えると。それこそ漫才をつくる時、どういうふうに構造を考えたりするんですか。
福徳 ほんとに遊びですね、即興でやるというのが僕らのテーマですね。そんなに考え込まず、とりあえずやってみようかという。
―というところから詰めていくと。
後藤 そうですね。
福徳 詰める作業はそんなに好きではないですね。ほんまに仕事やと思ってやっています。
―最初の即興でやっているときが一番……。
後藤 そうですね。楽しいし、ワクワクしますね。詰めていくとやっぱりね、やるときも緊張するようになるし。
福徳 楽しくないし。でも、武器は増えるんですけどね。複雑ではあります。
―最近の賞レースを見ていると、ミスできない感じがひしひし伝わってきて大変だなあと思うことが多いです。
後藤 そうですね。即興でやる場合はミスというものが存在しないというか。
福徳 無駄がないネタが多分、今、テレビで出回ってると思うんですけどね。例えば、M-1とかを見てても、全員が無駄をそぎ落とした、仕上がったネタをするんで。それを見て育った人たちはどんなお笑い芸人になるんやろうとは思いますけどね。
―お二人はこれからこうなりたいなっていうイメージはお持ちですか?
後藤 僕らにしかできないものを目指してという感じですね。
福徳 いつしかコント番組ができるようなコント師になれたらいいなとは思いますね。
―ありがとうございました!

高校時代からの友人同士であり、吉本興業の養成所であるNSCを卒業して2003年にコンビを結成。
「ABCお笑いグランプリ」第34回(2013)優勝など、数々の受賞歴を誇る。