作曲家×YJインタビュー vol.1

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撮影:石川耕三

新時代を彩る作曲家達に全4回にわたって直撃していくこのコーナー!!
記念すべき第1回はあの名曲「サイレントマジョリティー」(欅坂46)の生みの親・バグベアのお2人にインタビュー!!

 

バグベア

こぎみいい、ここみらいの2人組音楽ユニット。
「音楽は進化するときが来た」を合言葉にフリーランスで活躍している。二人で作曲してきた楽曲数は未発表のものを含めると、優に1000曲を超えており、幅広い作風で知られる。代表曲に、欅坂46の「サイレントマジョリティー」「不協和音」やラストアイドル「愛しか武器がない」、HKT48「意志」など。

 

―お二人は高校時代からのお知り合いとのことですが、どういった経緯でユニットを組まれることになったのでしょうか。

こぎみいい氏(※以下敬称略) 高校時代は同じ音楽系の部活にいたのですが、気が合ったきっかけは、聴いている音楽の趣味が似ていたからかもしれません。たとえば、地元でインストアライブがある時にはお互い必ずいる、みたいな(笑)。

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―オンの時も、オフのプライベートでも顔を合わせていたら、確かに何か運命的なものを感じますね。高校卒業後はどのような進路を辿られたのでしょうか。

ここみらい氏(※以下敬称略) 卒業後はお互い進学、就職と別々の進路を辿りました。私は栄養士として就職したのですが、職場の環境があまり良くなくて悩んでいました。

こぎみいい 自分は大学に進学して小説家を目指していましたが、なんとなく小説は合わないかなと思っていた中で、ここみらいもちょうど仕事が自分に合っていないんじゃないかと思っていた頃だったので、音楽の趣味が合っている二人で組んで楽曲を打ち出していけたら面白いことになるんじゃないかと思い、二人での音楽活動を始めました。

―その後は、コンペやオーディションなどを通してプロを目指されたという感じでしょうか。

こぎみいい そうです。大学の学祭で杉山勝彦さん(※)のステージを見て、「作曲家」という仕事があることを知り、その後すぐに音楽事務所に曲を送ってデビューという流れでした。また、オーディションに応募した「チャイム鳴ったら…」という曲を、X21というアイドルグループに使っていただくことができました。初めて作ってみたアイドル曲だったのですが、プロの作曲家になるということはアイドルの曲も作っていくことになるだろうということでチャレンジしてみたところ、オーディション通過が決まった上に、世にも出すことができたのは印象深かったですね。

(※)AKB48、乃木坂46、嵐、中島美嘉などに楽曲を提供する作曲家。アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のEDテーマなどでも知られる。

―デビュー前の経験で、何か現在のお仕事に活きてきているものはありますか。

ここみらい 二人でユニットを組んでオリジナル楽曲で路上ライブをしていたのですが、「こういう曲をやるとお客さんはこういう反応をしてくれる」ということを肌で感じられたのは良い経験になったかなと思います。

―実際の反応を見ながら、お客さんが楽しんでくれるポイントを探っていけるのは、確かに重要かもしれませんね。複数人で歌うアイドル曲と、そうでない楽曲で曲作りの方法は変わってきたりするのでしょうか。

こぎみいい メロディーでいえば、どうしてもレンジ(※音域の幅)が狭くなってしまうという面はあり、少しだけもどかしく感じる時もあります(笑)。

ここみらい 歌姫がソロで歌うような場合には2オクターブくらい使っていけるところを、アイドル曲の場合、複数人の音域を合わせるために、1オクターブから最大でも1.5オクターブくらいまでしか使えないことが多いですね。

こぎみいい メロディーの展開にしても、あまりにも難しいフレーズとかは使えないという面もあります。

―音域の面、展開の面などで歌われる方を意識されつつ曲作りをされているのですね。

ここみらい ライブなどで歌っている姿を想定しつつ作ることもありますね。

こぎみいい その人に合っていない曲を提供してしまうと、もしかしたら「着せられている感」が出てしまうかもしれないので、“入れ込み過ぎずにいながら熱中する”ようなちょうど良い距離感で、歌っている姿とそれで盛り上がっているファンの姿をイメージして曲を作っていくように意識しています。

―MV(※ミュージックビデオ)なども意識されたりするのでしょうか。

ここみらい 作っている最中にMVが浮かんでくるような時は、すごく良い感じで作れている時かなと思います。振り付けなども含めてイメージできている時は良い曲になることが多い印象です。

―デビュー当時、印象深かったお仕事などはありますでしょうか。

こぎみいい 自分たちで作曲をした曲で、自分が初めて作詞もさせていただいた曲があったのですが、そのレコーディングの際、共同で編曲をさせていただいた近藤圭一さん(※)から色々と学ばせていただいたのは思い出深いですね。レコーディングスタジオでのブースの使い方だったり、ディレクションのやり方を教えていただけました。

(※)AKB48の「シュートサイン」などで知られる作曲家。

ここみらい 近藤さんからレコーディングのノウハウを学べたのは、プロの作曲家として歩んでいくにあたって、貴重な経験になったなと思います。

―なるほど。今までで一番思い出深かったお仕事について伺えればと思います。

こぎみいい やはり欅坂46「サイレントマジョリティー」でしょうか。

―それこそMVの画面が思い浮かんでくるようなことはあったのでしょうか。

こぎみいい その点からいくと未知数なところがあったのですが、「すごい曲ができた」という実感はありました。正直、もしこの曲が世の中に出ないようなことがあったら引退した方が良いんじゃないかと思うくらい自信はありました。実際に世に出て、ものすごく大きな反響をいただいているのは、本当に聴いてくださった方達に感謝しています。

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―「サイレントマジョリティー」を作られる際、どの段階で「これは来た!」という感触がありましたか。

こぎみいい サビができた瞬間でしょうか。最初にサビのメロディーができたんですが、その時は「これはヤバいんじゃないか」と興奮したのを覚えています。サビができてから、ここみらいにAメロBメロのコード進行を作ってもらったのですが、サビ前の転調が少し普通で、「このサビの前にはもっと面白い転調が欲しい」というオーダーをしたところ、実際にあの面白い転調を作ってくれました。

ここみらい あの転調については、ピアノを触っていたら、たまたま「降りてきた」という感じでしたね。奇跡的でした。

―ありがとうございます。今、曲作りについてお話を伺っていて気になったのですが、お二人で作曲されるにあたって、作業はどのように分担されているのでしょうか。

ここみらい まず「どういう曲にするか」を二人で相談してイメージを共有して、「こういうコード進行にしていこう」という伴奏を私が作成していきます。それをこぎみいいに渡すとメロディーと(仮)歌詞が同時に出てくるという流れです。

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―コード進行については音楽理論的な話になってくるのかなと思いますが、これはどのように学ばれたのでしょうか。

ここみらい 誰かに師事したというわけではないのですが、独学でとにかく大量に資料を読みまくるようにしました。いわゆる音楽理論的なことから打ち込みに関するものまで、本やウェブで幅広く情報収集するようにしています。

こぎみいい 勉強する時間を確保することは絶やさないように気をつけています。感性的な面ではもちろんのこと、理論的な面でも強いグループでありたいとは思っています。そういう意味ですと、自分は理論派というよりは感覚派の人間なので、感覚派の自分と理論派のここみらいの二人で作曲していけるのは強みなのかなと思います。

―プロとしてやっていかれるにあたって、流行の音楽などへのアンテナも大事になってくるのかなと思いますが、どのように流行感を掴んでいかれるのでしょうか。

こぎみいい ビルボードチャートなどを積極的にチェックするようにしていて、基本的には世界中の音楽を研究するようにしています。日本の音楽の流行は少し特殊なので難しいのですが、世界で流行っているものの動きって大体の流れがあって、それは必ず日本でも流行るのではないかという意識はあります。ただ、J-POPは本当に特殊なので、うまく最先端のものを取り入れつつちょうど良い温度感で打ち出していければなと思っています。

ここみらい スタジオのあるこぎみいいの家には、トイレに至るまで各部屋にAmazon Echoが置いてあって、そこで聴きたいアーティストの名前を言うと、その人の最新の曲が流れたりするので、そういうことも駆使しつつ、とにかくたくさんの曲を聴くようにしていますね。

―各部屋にあるなんてすごいですね。お二人の曲はリズムの取り方からメロディー作りまで、非常に幅広さを感じますが、それはたくさんのインプットに支えられているのですね。

こぎみいい もちろんそれぞれの考え方だとは思いますが、中には「自分がカッコイイと思う曲しか作りたくない」とか「カッコイイ曲以外は存在意義が無い」とまで言い切ってしまう人もいます。可愛い系の曲でもカッコ良くない曲でも同じ音楽なので、切り捨ててしまうのは勿体無いし、少し寂しく感じてしまいます。作り手であるからこそ、聴いてくれる人に対して多様性のあるアプローチをして欲しいというか…。

ここみらい 色々な曲の良さを理解できて、共感できるというのも、作曲家として大切な要素だなと。

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―様々な音楽に対する向き合い方はプロとアマチュアの一つの違いなのかもしれませんね。お二人がプロとしてお仕事をされるにあたって、他に意識されているポリシーなどはありますか。

こぎみいい 基本的にはリスナーの皆様がついてきてくれるような作り方をしていかなければならないのですが、僕たちのスローガンは「音楽は進化するときが来た」なので、今ある音楽の延長線上にある未来を作っていきたいと思っています。みんなが知らなかった音楽を打ち出しつつ、驚いてもらって、それでいて好きになってもらうというのが理想ですね。

―ありがとうございます。