
新時代を彩る作曲家達に全4回にわたって直撃していくこのコーナー!!
いよいよ最終回となる今回は、昨年大ヒットしたKing & Prince「シンデレラガール」をはじめ、乃木坂46、欅坂46、家入レオ、Little Glee Monsterなど、多数の有名アーティストへ楽曲を提供しているSoulifeのお二人に直撃!!
Soulife

河田総一郎(Vo&Gu)と佐々木望(Gu&Cho)からなるユニット。
2006年、インディーズレーベルにてアーティストデビュー。2011年、遊助9thシングル『一笑懸命』作曲・編曲を担当し作家としてデビュー。King & Prince「シンデレラガール」や欅坂46「二人セゾン」など多数のヒット曲を手がける。
―お二人は高校時代からのお付き合いとのことですが、どのような経緯でユニットを組まれたのでしょうか。
河田氏(※以下敬称略) 高校時代はそれぞれソロでやっていたりバンドを組んでいたりと、別々に音楽活動をやっていました。高校を卒業して、二人とも東京の大学に進学することになったタイミングで、「せっかくだし一緒にバンドをやってみようか」ということになりました。

―高校時代は別々に活動されていて、大学時代に初めて一緒に音楽活動をされることになったのですね。そこから本格的にプロを目指されるきっかけは何だったのでしょうか。
河田 バンド活動をやっていた頃に、レコード会社から声をかけていただいた時期があって、そこからぼんやりとプロとして音楽をやっていくことを意識していきました。その後、そのバンドは解散してしまって、再びバラバラで動いていたのですが、2004年ぐらいに「また二人で何かやってみようか」ということになってSoulifeとしての活動を始めました。それからはデモテープを作っては送るということを繰り返していました。
―再びお二人で活動されていくというきっかけは何だったのでしょうか。
河田 僕はそれまで弾き語りをやっていたのですが、ちょうどその頃が今でいうDTM(デスクトップミュージック)、つまり打ち込み音楽がメジャーになってきた時期で、打ち込みを佐々木がやっているというのを聞いて、試しに自分の曲のアレンジをお願いしたのがきっかけでした。当時佐々木が住んでいた部屋に自分の曲を持っていってアレンジしてもらうというのを何度かやっているうちに「(アーティストとして)一緒にやってみようか」という流れになりました。
―アーティストとしてはどのような方向性で活動されていたのでしょうか。
河田 「Soulife」の名前にも入っているのですが、ソウルミュージック系の音楽を佐々木が好きで、僕は王道のJ-POPが好きなので、その二つを上手く融合して楽曲を打ち出していけたら面白いのではないかなと。
佐々木氏(※以下敬称略) Soulifeは二人でギターを持って弾き語りをしているユニットであること、僕らの世代にフォークソングが好きな人が多いということでフォークソングのユニットだと思われることが多いのですが、そことは違う方向を目指していました。

河田 その後、つばさレコーズというところから配信でリリースさせてもらえることになり、アーティストとして上を目指していこうとしていたのですが、なかなか上手くいかず…。そんな時、当時の僕らを担当していたプロデューサーから楽曲コンペの話をいただいて、楽曲提供をするプロ作家としての方向を意識し始めました。
佐々木 それまではアーティストへの楽曲提供というと、ある程度実績がある人に任せることが多かったと思うのですが、DTMが普及してきたことで「良い曲があれば誰でも提供できる」というように、プロ作家の間口が広がってきた時代であったことも、声をかけていただけた要因だったのかなと思います。また、自分たちの楽曲も、打ち込みからミックスまで、既にほとんど自己完結で制作していたので、コンペには対応しやすかったかなと。
―なるほど。作曲家として初めてのお仕事について伺えればと思います。
河田 遊助さんの「一笑懸命」という曲が初仕事でした。コンペに出しはじめて3~4曲目くらいで初めて採用された記憶があります。
―最初のお仕事がいきなりのヒット曲…すごいですね。岡山県のアイドル・S-Qtyの楽曲も手がけられていますが、それは地元繋がりなのでしょうか。
河田 僕の地元が岡山で、佐々木も隣の広島出身で、二人とも岡山県の高校に通っていたのですが、その先輩がアイドルグループをプロデュースするということで、声をかけていただきました。メジャーデビューという意味ですと「一笑懸命」が初仕事ですが、人に歌ってもらうために作ってパッケージにしていくという点ですと、こちらが初めての仕事と言えるかもしれません。
―それまでお二人でデュオとして活動されてきた上で、女性のアイドルグループに向けた楽曲作りというと切り替えが難しそうな印象です。
河田 初めて取り組むタイプの仕事だったので不安な面もありましたが、作っているうちに「意外と面白い!」と思えましたので、特にストレスは感じませんでしたね。
佐々木 アーティストにはそれぞれ「こういうイメージを付けないといけない」という枠組がしっかりしているケースが多いので、楽曲提供する際にはそのイメージを掴みつつ曲作りをしていく必要があります。自分たちも元々はアーティスト側だったので、そこの切り替えという意味では、最初の頃、少し戸惑ったかもしれません。
河田 確かに、自分たちのためではなく誰かに寄り添って作っていくということは、それまでに全く取り組んだことがなかったことなので、良い経験になりました。

―誰かに歌ってもらうための曲作りにおいては、やはり歌い手が歌っている姿のイメージが大切だったりするのでしょうか。
河田 ケースバイケースではあるのですが、どういった人たちが歌うのかを調べて「こういった曲にしたら面白いんじゃないか」と考えてから作るようにしています。たとえば、S-Qtyの時は、メンバーのオーディションの段階から参加させてもらって「こういう人たちが歌うんだな」とイメージを付けてから作りましたし、遊助さんの時は、既にメジャーでアーティストとして活躍されていたので、それ以前に歌われていた曲を調べたりしていました。
―歌い手さんによって得意な音域や不得手な音域は異なってくると思うのですが、そういったところも気にされるのでしょうか。
河田 もちろん、アーティストによって得意な音域が違うということはありますが、そこばかりにとらわれないように気をつけています。作曲時は最初に僕がアコギで大まかな曲作りをしていくのですが、その時に出来上がったものが気持ち良いかどうかを一番念頭に置いていますね。僕はまず、「このサビがグッとくる」というものを探っていくので、レンジ(音域)を気にしすぎると可能性が狭まってしまうのかなと思います。大枠が出来上がったら佐々木と一緒に詰めていくので、その時に「ここは(音域が)高すぎるんじゃないか」といった感じに調整することはありますが、そこでも、なるべく妥協にならないようにしています。
佐々木 歌い手さんからすると少ししんどい曲が多いかもしれませんね(笑)。

―なるほど。「サビから作っていく」というお話がありましたが、作業の流れについて伺えればと思います。
佐々木 まず河田がザックリとした曲と仮の歌詞をイメージで作ってくるところから始まります。そこから僕が編曲をしていくのですが、すぐにその作業に入る場合もあれば、二人で話し合いをしつつ作業をしていくこともあります。また、コンペの内容によっては「こういうアレンジで」というオーダーもあるので、ケースバイケースでアレンジを行っていきます。
河田 曲の骨組みを決めていくところはなるべく一緒にやっていきたいので、僕が直接佐々木の家に行くことが多いですね。データでやりとりをすることも出来るのですが、「ここをもっとこうしたい」というキャッチボールがしにくくなってしまうので、細かいニュアンスを共有するためにも一緒に作業をするように心掛けています。
佐々木 あとは、河田が自分で捨ててしまっているアイデアがあったりするのですが、それが案外良いという場合もあるので、それを拾えるチャンスを作るという意味でも一緒に作業をするのは大切かなと思います。
河田 そういう意味では、アーティストとして二人でやっていた頃から方法は同じかもしれませんね。

―これまで多くのお仕事に取り組まれていますが、印象的だったり、何かの転換点となったお仕事があれば教えてください。
河田 Flowerというグループの「さよなら、アリス」という曲をやらせていただいた時でしょうか。それまでは僕らのアーティスト時代の作風である、「ストレートに元気のあるタイプの曲」がコンペで採用されることが多かったのですが、「さよなら、アリス」の少し艶のある感じだったり、和の要素が強いメロディラインであったりが受け入れてもらえたのは驚きで、その経験が欅坂46の「二人セゾン」などに結びついているので、ある意味転換点と言えるかもしれません。あとは、J☆Dee'Zというグループのお仕事をさせていただいた時に、初めて作詞、作曲、編曲の全てを任せてもらえたので、アーティスト像を含めて形作っていくような経験が出来たのは印象に残っています。
佐々木 普通は、既に出来上がっているアーティスト像に沿って曲作りをしていくケースが多く、アーティストのイメージを方向付けていく段階から携われる機会は多くありません。もちろんレコード会社の意向も踏まえつつのディレクションではありましたが、そのような段階から関われた経験は大きいと思います。
―最後に、今後の抱負についてお聞かせください。
河田 最近、松任谷由実さんがあるインタビューで「私は詠み人知らずの歌を書きたい」という旨のことを仰っていたのですが、自分自身も大きな目標として「小さい子からお年寄りまでみんなに歌ってもらえる」ような歌をいつか作ってみたいと思っています。

佐々木 あとは、新人のアーティストをゼロからプロデュースしていきたいと思っています。ソロだけで全てを回していくのが難しくなっている時代なので、新人の方と最初の段階から一緒に作っていくことを目指していきたいと思っています。
河田 そういうのってきっと出会いだと思うので、何か良いご縁が無いかなぁと…(笑)。ご応募お待ちしております。
―ありがとうございました。